奥野製薬工業は、「トップテクノフォーカス」(表面処理・無機材料部門)、「トップフードテクノフォーカス」(食品部門)という情報誌で最新の業界・技術動向をご紹介しています。ご入用のお客様はお問い合わせフォームからご連絡ください。
藻類スピルリナのらせん形状を高機能フィラーとして活かすべく、無電解めっきによって、機械加工では量産困難な金属マイクロコイルの作製した(バイオテンプレート技術)。このサイズの金属マイクロコイルは、ミリ波・テラヘルツ帯電波吸収に極めて有効なため、次世代情報通信規格(ポスト5G/6G)のインフラ基盤材料として、さまざまな媒質素材への分散・複合化および成形加工などの製造プロセス開発と電波吸収評価を行っている。
従来、置換反応で触媒のパラジウム核を形成して銅素材上に無電解めっきを施すが、銅素材の過剰溶解による腐食の発生や、不均一なパラジウム核の形成によるめっき皮膜の被覆性低下が懸念される。これらの課題点を解決するために、銅素材上に還元反応でコバルト触媒を形成する触媒付与液「ICPアクセラCOA」を開発した。
本報では、「ICPアクセラCOA」の特徴およびその無電解めっき皮膜の特性などについて報告する。
濃厚塩水溶液からの3価クロムめっきは溶液中の自由水の減少により、水素発生が抑制されるため電流効率に優れる。さらに高活量の塩化物イオンを含有するため、有機錯化剤が不要となり高純度のクロムめっき皮膜が得られ、6価クロムめっき皮膜と同等の皮膜物性となる。
本報では、塩化カルシウムおよび塩化リチウムの濃厚水溶液を溶媒に用いた3価クロムめっき「トップハードクロムHCA」および「トップハードクロムHLC」について報告する。
ハスの葉が撥水性を有することは周知されているが、その撥水性の発現は、葉の表面にある数µm程度の突起が配列した微細な凹凸構造に起因する。近年、この形状を模倣することで超撥水化し、防汚や自己清浄、抗菌などの機能を付与する研究が注目されている。しかし、アルミニウム表面に撥水性を付与する場合、従来法では多段工程が必要で、コスト面などで課題がある。
本報では、浸漬法のみの簡便な工程で微細な凹凸構造を形成し超撥水性を付与する「トップアルジークプロセス」について報告する。
最先端の半導体パッケージでは配線の微細化とビアの小型化が進んでいる。微細回路形成にはシード層である無電解銅めっきの薄膜化が要求され、ビア底とのめっき接合面積が狭い小径ビアには、ビア接続信頼性の向上が必須となる。
本報では、その最先端領域で求められる無電解銅めっきの薄膜化とビア接続信頼性向上を達成した無電解銅めっきプロセス「OPC FLETプロセス」について報告する。
Zn-Ni合金めっきの酸性浴は従来のアルカリ性ジンケート浴よりも析出速度・電流効率・耐水素脆化特性に優れている。当社は酸性の塩化浴に着目し、塩化浴Zn-Ni合金めっきにSiO2ナノ粒子を添加することで、高耐食性とおよび耐水素脆化特性が低膜厚で得られるZn-Ni-SiO2複合めっき浴「ニコジンクACS」を開発した。
本報では、新たな防錆処理技術となる「ニコジンクACS」のめっき皮膜特性について報告する。
近年、パワーデバイスは高耐熱化が求められており、そのUBM(Under Bump Metallurgy, Under Barrier Metal)として使用される無電解Ni-Pめっき皮膜には、高温接合や高温環境下において破断や脆化が発生しない特性が求められている。本報では、優れた耐クラック性やはんだ接合性が得られるパワーデバイス向けの無電解Ni-Pめっき液「トップUBPニコロンMLP」について紹介する。
電子機器等の小型・高性能化は加速度的に進んでおり、パッケージ基板でも2.1DやPLPなど実装形態が提案され、配線幅1μm台の超微細領域に到達しつつある。さらに、ビア径の極小化と基材表面の低粗度化が求められており、当社では従来技術の革新を進めている。本報ではこれらの問題を解決し、L/S=1/1μmの回路形成を可能にする無電解銅めっきプロセス「OPC FLETプロセス」とその周辺技術について紹介する。
アルミニウムは軽量かつ加工性に優れ、多用途に供される金属素材であるが、電気化学的に卑な金属であるため、一般的な防錆処理として陽極酸化処理による酸化皮膜を形成している。近年、自動車材料をはじめとする様々な分野で使用されるアルミニウム部材の防錆要求が高まっているが、従来の処理ではその要求を満足できない。その解決策としてゾル-ゲル法を用いたシリカ系薄膜コーティング剤「Protector」による防錆処理技術を開発したので紹介する。
第六研究室は2018年4月に表面処理の新規および基礎研究分野を担当する研究室として立ち上げました。シーズとニーズの両面を追求し、将来、奥野製薬工業の主軸となる製品を研究開発しています。また、異分野への新規参入を目指し、過去実績が少ない分野についても産学連携を通して積極的に挑戦しています。今回は防錆・非水・環境をキーワードとした3件の共同研究の成果について紹介します。
近年、自動車部品の軽量化にともない、アルミニウム合金材の適用が増加している。中でも内燃機関に使用される部品は、耐食性や硬度の他に疲労強度に優れた無電解Ni-Pめっき皮膜が求められている。本報では、耐疲労性および耐食性に優れた重金属フリー無電解ニッケルめっき液「トップニコロンNHP-GE」について紹介する。また、高硬度で摺動性に優れた無電解Ni-P/PTFE複合めっき液「トップニコジットLPFE」についても併せて紹介する。
プラスチックめっきにおいては、環境や人体に有害なクロム酸および高価なパラジウムを使用するという課題がある。また、生産性や管理面を考慮すると、処理工程は極力短縮化されることが望ましい。本報ではクロム酸および高価なパラジウムを使用することなく、高い密着性と良好なめっき析出性が得られ、かつ、処理工程を大幅に短縮することが可能な次世代プラスチックめっきプロセス「トップゼクロムPLUSプロセス」について紹介する。
樹脂めっきにおいて、6価クロムフリーエッチングの実現と電気めっき皮膜の耐食性向上は永遠の課題である。本稿では6価クロムエッチングの代替技術として、酸性過マンガン酸エッチングの工業化までの取り組み、さらに、従来の多層ニッケルめっきに替わる高耐食性のSn-Ni/Cr3+めっきプロセスについて紹介する。
近年、各種金属部材の縮小化や軽量化が進んでおり、従来の防錆処理技術である塗装やめっきでは、十分な防錆効果が得られない場合がある。そこで我々は、各種金属素材への防錆処理を目的とし、ゾル-ゲル法を用いたシリカ系薄膜コーティング液「Protectorシリーズ」を開発、新たな高防錆処理技術を実現した。
一般的に無電解Ni-Pめっき液はNi濃度5~6 g/L、処理温度80~90 ℃で使用されている。近年、環境問題が取り沙汰される中、企業には環境に配慮した製品開発が求められている。本稿では、省資源・省エネをテーマに3 g/Lの低Ni濃度で使用可能な無電解Ni-Pめっき液「トップニコロンEC-LF」と70 ℃の低温で使用可能な無電解Ni-Pめっき液「トップニコロンMSH-LF」について紹介する。
現在、プリント配線板への無電解銅めっき触媒にはPdが広く用いられているが、セミアディティブ工法において回路間に残渣として存在し、絶縁信頼性への影響が懸念されている。また、最終表面処理ではNiめっき皮膜の膜厚がファインパターン化への弊害となり得る。このような背景から、我々は超微細回路に適応した「トップUFPプロセス」を開発、ナノAg触媒を用いた無電解銅めっき技術とNiめっきを用いない無電解Pd/Auめっきプロセスの応用により、L/S=2/2 μmを実現した。
車載用プリント配線板の回路形成法は、従来のサブトラクティブ法からMSAP(モディファイドセミアディティブ法)に移行しつつある。MSAPの利点はパターンの微細化が可能なことであり、ビアフィリング硫酸銅めっき添加剤についても、これまで以上に優れたパターン性能が要求される。本稿ではMSAPによるプリント配線板で求められる良好なパターン性能(均一電着性)と卓越したビアフィリング性を兼ね備えた硫酸銅めっき添加剤「トップルチナVT」について紹介する。
プラスチックめっきの中で最も汎用性の高いABS樹脂にめっきを施す技術はすでに確立され、多くのめっき専業者で工業化されている。現在実用化されているプラスチックめっきプロセスは、クロム酸-硫酸の混合水溶液からなるエッチング工程が必要不可欠である。クロム酸エッチング処理することによってABS樹脂表面のブタジエン成分が酸化・溶解し、樹脂表面に微細孔を形成させるため、高いめっき密着性が得られる(アンカー効果)。しかし、クロム酸エッチング液中に含まれる6価クロムは発癌性物質で人体に有害であること、作業環境が悪いこと、廃液・排水が深刻な環境問題を引き起こす可能性があること、6価クロムの排水基準が厳しいため、その排水処理に大きなコストと負担がかかるなどの多くの問題点がある。クロム酸エッチングの代替候補として過マンガン酸が挙げられるが、従来の酸性過マンガン酸水溶液は液安定性に問題があり、連続使用が困難であった。当社では液安定性に優れた酸性の過マンガン酸水溶液をエッチング処理に用いたプラスチックめっきプロセス「トップゼクロムプロセス」を開発した。本報ではトップゼクロムプロセスの特徴を従来のクロム酸エッチングプロセスとの比較データを中心に報告する。
現在、プリント配線板への無電解銅めっき触媒として、活性の高さからパラジウムが広く用いられている。しかしパラジウムは価格変動が大きく高価であるという点や、回路間の触媒残渣に起因する最終表面処理におけるパターン選択性や絶縁特性への影響が懸念されている。このことは近年の熾烈なコスト競争や軽薄短小化の要求にともなうプリント配線板の更なる高密度化に対して深刻な問題となっている。こうした背景から、我々は銀を触媒とした無電解銅めっきプロセスについて検討を行ってきた。今回、高分子保護剤を用いた銀ナノ粒子(DIC株式会社提供)を触媒とし、専用の前処理液及び無電解銅めっき液を組み合わせたNACEプロセス(Nano Ag Catalyst Electroless copper plating process)の開発に成功した。本稿では各種性能評価に加え、パラジウム触媒プロセスとの優位差について紹介する。NACEプロセスは、プリント配線板用無電解銅めっきプロセスに求められる特性であるめっきつきまわり性、接続信頼性、密着性が良好であり、回路間の絶縁信頼性にも優れる。また、パラジウム触媒と比較し金属価格差によるコスト低減のみならず、工程数短縮や触媒残渣除去工程の省略が可能となる。このことから、微細配線化に向けた基板品質の向上に大いに貢献できるものと考えられる。
Niは表面処理において広く利用されている金属であるが、アレルギー問題が指摘されている。スペキュラム合金(Cu-40mass%Sn)は色調が金属Niと酷似しており代替めっきとして期待されている。従来のCu-Sn合金めっきはシアン浴が主流であったが、現在では環境負荷の小さいピロリン酸浴が開発・実用化されている。しかし、ピロリン酸浴はめっき皮膜にクラックが発生しやすく厚付けが困難であった。我々は酸性浴のCu-Sn合金めっきについて検討し、硫酸浴タイプのカスタロイCNFを開発した。本研究では、カスタロイCNF浴から得られたCu-Sn合金めっき皮膜の皮膜特性と析出機構について報告する。カスタロイCNFは、錯化剤と還元剤を併用することで幅広い電流密度域でスペキュラム組成のCu-Sn合金皮膜を得ることができた。めっき皮膜はCu3SnとCu6Sn5の2種類の金属間化合物相で構成されており、電着応力は引張応力を示すが、クラックが発生し難く10µm以上の厚付けが可能であった。人工汗試験によるめっき皮膜の金属溶出量を評価した結果、Niめっき皮膜と比較して金属の溶出が少ないということが明らかとなった。電気化学測定によってカスタロイCNFは錯化剤と還元剤を併用することで、めっき浴中のCuがCu(Ⅰ)錯体として存在していること、さらにSnの析出に誘起されCuが共析する析出機構が明らかとなったCu(Ⅰ)錯体として存在することにより、カスタロイCNFはシアン浴やピロリン酸浴と比較して約1.5倍の成膜速度を示したと考えられる。
この数年、新規エレクトロニクス技術としてプリンテッドエレクトロニクスが注目を集めている。プリンテッドエレクトロニクスは、導電性インクとスクリーン印刷、インクジェットなどを用いて、印刷によって電子回路を形成する技術である。回路形成材料としては、銀やその合金等が比較的多く用いられているが、用途や印刷方法によっては電気伝導性の不足、マイグレーションが問題となることがある。これらの対策として、上記回路への無電解銅めっき処理が有効である。このとき無電解銅めっきに対しては、パターン外析出のない優れたパターン選択性および生産性向上のため高い析出速度が要求される。さらに、フィルムを素材に用いた場合には、回路形成部の屈曲に耐え得る良好な皮膜物性が必要である。このような背景から、当社では独立回路用無電解銅めっきプロセス「OICプロセス」を開発した。前処理液のpHを全て中性付近としており、耐薬品性に乏しい素材にも適応可能である。無電解銅めっき液には独立回路基板用途として、ファインパターン性に極めて優れる「OICカッパー」、高速タイプの「OPCカッパーNCA」、良好な皮膜物性を有し、フィルム材へのめっきに最適な「OPCカッパーHFS」、発がん性が指摘されるホルムアルデヒドを含有しない「OPCカッパーAF」の4浴を開発した。各々異なる特長を有し、従来では適応困難であった様々な素材及び用途にも適応可能である。
当社は工業用クロムめっきへの適応を目指し、3価クロムめっきの成膜速度向上を目標として開発に着手し、高い成膜速度を有するトップファインクロムSPを開発した。本報では成膜条件が皮膜特性に及ぼす影響について検討を行った。成膜速度は電流密度に比例して増加し、電流密度20 A/dm2では約40µm/hの高い値が得られた。また、ビッカース硬度については陰極回転数、電流密度、成膜温度および浴pHを変化させた場合でも850~900 Hvの安定した値を示した。得られた皮膜は6.0 at%程度の炭素を含有することがXPS測定により確認された。また、破壊じん性についての評価を実施した結果、めっき条件により大きく変化した。成膜温度を上げた場合には、皮膜中の酸素含有率は低下し、この結果6価クロムめっきと同様の破壊じん性値が得られることが判明した。
黒色皮膜の形成方法として、無電解ニッケルめっき後に化成処理液に浸漬する方法がある。皮膜は、茶褐色から濃黒色まであり、外観の要求レベルによって仕様は異なる。また、近年環境保護規制の要求が高まり、表面処理業界においても有害物質を使用しない製品開発が進められている。本稿では、黒色度が高く、無電解ニッケルめっき液に鉛化合物などの有害物質を使用していない黒色無電解ニッケルめっき液「ニコブラックMT-LF」について紹介する。
クロムめっき皮膜は独特の青白い光沢外観を示し耐食性にも優れており、さらに高い皮膜硬度を有することなどから工業的に幅広く使用されている。一般的に使用されるクロム酸と硫酸から成るサージェント浴は組成が単純であり、安価で浴管理も容易な優れためっき浴である。しかし、めっき浴中には発ガン性物質であるクロム酸を多量に含有し、電流効率が低いために発生する6価クロムを含むミストが作業環境の面で問題となる。一般にはミスト防止剤などを添加することで6価クロムの大気中への飛散を抑制する。しかし、クロムめっき浴は酸化力が非常に高いため、ミスト防止剤として添加する界面活性剤には耐薬品性の高い(分解されにくい)物質を使用する必要がある。従来、主に化学的安定性の高いフッ素系の界面活性剤が使用されてきたが、近年ではPFOS規制などによりこれらの物質の使用も制限される。このような背景の中いくつかの課題はあるものの、近年、3価クロムめっきが注目されている。ここでは装飾目的で使用される、黒色外観を有する3価クロムめっきについて述べる。
PTFEは優れた潤滑性を有しており、Niめっき皮膜に分散させることで摺動性、撥水性を向上させることができる。一般的には無電解Ni-Pめっき液にPTFEを含有させためっき液が主流である。 無電解コンポジットめっきは浴寿命が短い、成膜速度が遅いなどの課題があり、これに対応するため、電気めっき液に適応できるPTFE分散液を開発した。
プラスチック材料への装飾めっき技術は、軽量な材料に金属光沢外観を持たせることが可能なこと、また生産効率が良くデザインの自由度が高いことなどから、自動車部品や水栓部品、アミューズメント部品などに広く利用されている。プラスチック材料の中でも、特にABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンの共重合体)は安価で加工性に優れ、かつ表面処理が容易であることから、めっきを行う素材としては最も汎用性が高い樹脂として使用されている1-3)。1960年代に工業化されたこの技術は、無電解めっきにより素材表面を導体化させる「無電解めっき法」が用いられていた。しかし一般的な無電解めっき浴はホルマリンやEDTA、次亜リン酸などの有害化学物質を含有しており、年々環境保全の重要性が高まっていく中で、当社では上記、有害化学物質を使用しない環境対応型のプラスチックめっきプロセス「CRPプロセス」を開発した4)。CRPプロセスとは、素材表面に触媒を付与した後に導体化処理により表面に導電性皮膜を形成し、直接電気めっきを施すプロセスである。CRPプロセスは、無電解めっき法に比べて工程数が少なく、かつ導体化浴が非常に安定で半永久的に使用可能である特長を有している。また、無電解めっき皮膜に起因する外観不良も低減できるといったメリットも合わせ持っているため、開発以来多くの採用実績を重ねてきた。一方、CRPプロセスのもつ課題としては、無電解めっきプロセスと比較して高濃度のパラジウム触媒を必要とすることが挙げられる5)。パラジウムの価格は近年上昇していることから、パラジウムの使用量を低減することはCRPプロセスにおける最も重要な課題である。そこで我々は、各種薬品の高性能化のみならず、各工程の最適な処理方法も検討することでパラジウム使用量の低減を可能にした新規プロセス「CRPプロセスNEX」を開発した。本報では、新規に開発したCRPプロセスNEXの特性について報告する。
プリント配線板に用いられるスルーホールめっきおよびビアフィリングめっきは広く普及した技術となっており、今日では生産性の向上が強く求められるようになった。生産性の向上には電流密度アップによるめっき時間の短縮が最も有効な手段であり、これに対応可能な硫酸銅めっき添加剤の開発が望まれている。今回、この要求に応えるべく開発した次世代型硫酸銅めっき添加剤「トップルチナHV(ビアフィリング用途)」および「トップルチナHT(スルーホールめっき用途)」を紹介する。
コーティング技術は、材料の表面を機能性材料で被覆することにより、容易に機能性を付与することができる表面処理技術である。コーティングにより付与できる機能性としては、化学的、物理的、光学的、電気的、触媒的機能など幅広く、その要求される特性によりコーティング膜厚が調整される。コーティング材料として、無機材料は有機材料よりも耐摩耗性、耐熱性、耐候性などに優れており、有機材料には無い機能性を付与することが可能である。特に、シリカ(SiO2)系コーティング材料は、高硬度で耐久性に優れた透明薄膜が得られることから、ハードコートや保護膜などに使用されている。また、酸化チタン(TiO2)系コーティング材料は、高屈折率や光触媒機能など有機材料では成し得ない特性を有しており、その特性を応用した用途で幅広く使用されている。本報では、無機材料の湿式コーティング材料として開発したSiO2系およびTiO2系薄膜材料をコーティングすることにより得られる各種機能性について報告する。
染色アルマイト品に対応できる封孔処理として、酢酸ニッケル封孔が長年使用されている。
しかしながら、陽極酸化皮膜の孔中にニッケルが充填されるため、個人差はあるものの金属アレルギーが起こる。このため、ニッケルフリータイプの封孔処理が求められている。
本報では、新規に開発した染色アルマイト品対応ニッケルフリー封孔処理剤である「トップシールNIF」の特長、メカニズム、性能について、既存の酢酸ニッケル封孔との比較を交えて紹介する。
無電解ニッケルめっき液において、リン含有率が9~11%の中高リンタイプのめっき液は、一般に皮膜特性として高耐食性を有しており、様々な分野での使用が増加している。それに伴い、めっき液の性能アップが求められるようになり、析出速度のアップ、光沢性の向上、皮膜応力の減少、つきまわり性の向上等の改善が要望されている。
新たに開発した中高リンタイプ無電解ニッケルめっき液のトップニコロンSA-98-LFGは、鉛フリーであり、従来浴に比べ優れた光沢性、低応力化等の皮膜特性向上、アルミニウム素材へのめっき適応性アップなどによりさらなる用途への展開が期待される。
本報では中高リンタイプ鉛フリー無電解ニッケルめっき液として開発したトップニコロンSA-98-LFGの特長およびザラ、ピットの抑制、耐食性の向上に効果的なトップニコロン湿潤剤Cの優れた性能について報告する。
樹脂めっき用直接硫酸銅めっきプロセスであるCRPプロセスは、一般的な無電解めっきプロセスに比べて排水処理が容易で環境負担が軽減される、工程数が少なくコスト削減に有利である、無電解めっき皮膜に起因する不具合を低減できるといったメリットを有しており、開発以来、多くの採用実績を重ねてきた。
一方で、CRPプロセスはキャタリスト浴中のパラジウムが無電解めっきプロセスよりも多く必要であり、更に近年パラジウムの価格が高騰していることから、パラジウム使用量を低減することが急務の課題となっていた。 そこで我々は、CRPプロセスが有するメリットを維持しつつパラジウム使用量の低減を可能とした新規直接硫酸銅めっきプロセス「CRP-DCプロセス」を開発した。
本報では、CRP-DCプロセスの特性について紹介する。
導体ペーストやLTCC基板などの焼結助剤(結合剤)には低融点ガラスが用いられており、その低融点ガラスはRoHS指令を代表とする環境規制から無鉛ガラスが主流となっている。そこで我々は、骨格の違いによりビスマス系、亜鉛系、シリカ系と分類し、種々の無鉛ガラスを開発してきた。また、焼結助剤として無鉛低融点ガラスを添加したAgペーストによる電極上には、良好なはんだ接合性・Auワイヤーボンディング性を得るためにNi/Auめっきが行われるケースが多く、Ag電極に耐めっき性が要求される。
そこで本論文では、焼結助剤である無鉛低融点ガラスの組成と耐めっき性に着目し、めっき液に対する無鉛低融点ガラスからの溶出成分、溶出量およびAg膜状態と耐めっき性について検討した結果を報告する。
発光ダイオード(Light Emitting Diode:以下LED)は長寿命、高発光効率、省エネルギーなどの特長を有しており次世代照明用光源としても注目されている。LED素子周辺に配置される反射板への表面処理には反射率に優れたAgめっきが用いられている。しかし、Agは変色し易い金属であるため、長時間の使用による反射率の低下がしやすい。
近年、WEEE、RoHS指令、REACHなどの法規制により環境負荷物質の低減および使用制限が促進されている。
無電解銅めっきにおいては、安価で入手しやすいことから、ホルムアルデヒドが還元剤として広く使用されている。ホルムアルデヒドは蒸気圧が低いため、低濃度でも刺激性が高く、近年発ガン性物質としても認定されている。環境や人体への悪影響が大きいことから、今後規制の対象になっていく可能性が高い。
このような背景から、当社では、ホルムアルデヒドを使用しない無電解銅めっき液の開発に取り組み、次亜リン酸ナトリウムを還元剤とする無電解銅めっき液「OPCカッパーAF」を開発するに至った。
我々は工業用クロム代替を目的とし、高速3価クロムめっき;トップファインクロムSPを開発した。トップファインクロムSPは塩素イオンを含まない硫酸浴タイプでありながら、約 30μm/hの成膜速度と6価クロムに匹敵する16.5%の高い電流効率を示した。析出状態の皮膜硬度は6価クロムめっきと同等であり、熱処理を行なうことで皮膜構造が変化し硬度はHv=1580まで上昇した。耐摩耗性についても6価クロムめっきに近い性能であり、熱処理後の皮膜においては6価クロムを上回る結果が得られた。
また、従来の6価クロムめっきでは困難とされてきたバレルめっき用の3価クロムめっき液;トップファインクロムBRの開発にも成功した。トップファインクロムBRから得られたバレルめっき品は均一な膜厚と6価クロムめっき皮膜に類似した白色光沢外観を示した。
現在実用化されている銅めっき液には、シアン化銅浴、ピロリン酸銅浴、硫酸銅浴等があるが、鉄及び鉄合金、亜鉛合金、マグネシウム合金上に密着の良い銅めっき皮膜が得られる浴はシアン化銅浴をおいて他にない。しかしシアン化銅浴は有毒なシアン化合物を多量に含むため、労働衛生面、環境面で問題が残っている。
この問題に対応するために、有毒なシアン化合物を一切使用せず、鉄、亜鉛合金、マグネシウム合金に対して優れた密着性が得られるストライク銅めっき液「トップソフトカッパー」を開発した。本報では、「トップソフトカッパー」の低い置換反応性と優れた密着性を中心に、その特長について紹介する。
多孔性金属は比表面積の大きさ、優れた物質保持性などから機能性材料として利用価値が高く、環境、エネルギー対策としてのニーズも期待されている。多孔性金属の製造については多くの方法がなされているが、その方法は何れも特殊な設備を必要とし、得られる金属多孔質体の形態も制限される。
我々は単純な湿式めっき法による多孔性皮膜の形成条件を検討した結果、ワット浴およびピロリン酸銅浴から直径1μm前後の孔径を有する多孔性皮膜を得ることに成功した。 本報告では、ワット浴およびピロリン酸銅浴から得られる多孔性皮膜の形成に及ぼす諸因子の影響について報告する。
ビルドアップ配線板にはビアフィリングめっきが多く利用されている。昨今ではこのビアフィリングめっき技術が、すでに広く普及した技術となり、今後はより一層、生産性の向上が求められる。
当社従来品の貫通ホール対応ビアフィリングめっき添加剤は、標準電流密度が1.0A/dm2であり、その条件では良好な性能を発揮するが、高電流密度(1.5A/dm2以上)では性能の低下が起こり、性能を維持しつつ生産性向上の要求に応えることは難しい。
そこで我々は、高電流密度用の貫通ホール対応ビアフィリングめっき添加剤であるトップルチナHVを開発した。今回、そのトップルチナHVの開発経緯と性能について、紹介する。
フレキシブルプリント基板材料であるCCL材は、今後ますます需要が高くなると予想される。その製造方法のうち、ポリイミドフィルム上へ直接金属薄膜を形成するメタライジング法は銅の厚みが自由に変えられ、セミアディティブ工法に対応可能であることから、ファインピッチ化に適した材料として注目されている。メタライジング法はスパッタによる薄膜形成方法が既に確立されているが、大掛かりな真空設備を必要とするため、初期費用が高いという課題がある。一方、湿式めっき法は、コスト面でメリットがあることから今尚注目されている。
湿式めっきによりポリイミドフィルム上へ薄膜Ni層を形成するプロセスとして、「SLPプロセス」を昨年発表した。今回新たに開発した無電解Niめっき液「SLP-620ニッケル」を用いることで、シード層除去時間の大幅な短縮が実現し、パターン形成性が飛躍的に向上した。フィルム素材には現行CCL材として普及しているカプトン材やシリカハイブッリドであるポミラン材、どちらについても高い密着強度が得られることから、様々なフィルム種にも対応できるプロセスとして期待できる。本報告では新規開発浴により作製したニッケルシード層を用い、セミアディティブ工法によるパターン形成を検討したので報告する。
これまでにわれわれは印刷と焼成だけで透明電極パターンを形成できる材料の開発に取り組み、スクリーン印刷タイプのITO(Indium-Tin Oxide)ナノ粒子ペースト“ナノディスパーITO”を商品化した。その主成分であるインジウムは、枯渇が深刻化している希少資源であり、これに代わる透明導電膜材料が望まれている。
代替材料の一つである酸化スズ(SnO2)の可視光領域における透過率はITOとほぼ同等、そして、遠赤外線領域において高い反射を示し、また、機械的強度や熱的および化学的安定性に優れるものの、導電性とエッチング性能で劣る。天然資源として豊富に存在するため、ITOの透明導電膜に比べて低コストで市場に供給できる。
本稿では、スズ錯体を前駆体とする熱分解反応によりSnO2ナノ粒子を、さらにその熱分解反応時にアンチモン化合物を添加することによりATO(Antimony-Tin Oxide)ナノ粒子を新規に合成し、SnO2系ナノ粒子ペーストによるスクリーン印刷法を用いた透明導電膜の形成およびその特性について述べる。
実用金属の中で最も軽量であるマグネシウムは、工業的に家電製品や車両部品など様々な分野での適用が期待されている。しかしながら、マグネシウムは化学的に活性で腐食しやすいため、耐食性を向上させる表面処理は不可欠である。
今回開発した新規プロセスはクロムフリーエッチングとシアンフリーストライク銅めっきを組み合わせた環境にやさしいめっきプロセスであり、密着性および耐食性に優れためっき皮膜が得られる。本報では、各処理工程の特長と構成について述べ、その優れた密着性と耐食性について紹介する。
無電解ニッケルめっき浴の耐食性は、素材表面の状態に左右されることが多く、高耐食性を得るためにはめっき膜厚を厚くすることが一般的である、とされてきた。
新たに開発したトップニコロンRCH‐LFは、中性塩水噴霧試験等の耐食性試験において、従来の同等浴よりも良好な耐食性を示し、薄膜化などが期待できるめっき浴である。
本報では、耐食性試験結果を報告するとともに、その機構についての考察および、その他の優れた特性についても紹介する。
我々は3価クロムめっきの課題点であった色調の改善を目的とし、装飾用3価クロムめっき;トップファインクロムを開発した。得られた皮膜は従来の3価クロムめっきと比較すると大幅な反射率の向上が見られ、6価クロムめっき皮膜と類似した色調を示した。
また、耐食性を向上させるための6価クロムフリーの防錆処理剤の開発にも成功した。塩水噴霧試験およびCASS試験により浸漬防錆処理剤であるトップトライパッシブおよび電解防錆処理剤であるトップエレアップの防錆効果を確認したところ、6価クロムであるクロム酸水溶液(Cr=10g/L)を用いた浸漬防錆処理と同等の効果が得られた。
複合酸化物系顔料は、2種類以上の金属酸化物からなる固溶体である。その優れた耐久性から、窯業、塗料、樹脂およびガラスペースト等の各種分野で使用されている。従来の黒色無機顔料のほとんどは、耐熱性、耐酸性の向上および色調の調整のために、クロム酸化物(Cr2O3)を含有しており、黒色無機顔料の成分には欠かせない原料の1つとして多用されてきた。しかし、その3価クロムは、加熱処理等によって、一部が6価クロムに変化する。顔料の製造工程においては、水洗処理等によって、6価クロムを除去しているが、加熱または紫外線暴露等の使用環境により、クロムが3価から6価に変化する可能性が否定できない。そこで我々は、マンガン酸化物を主成分としたクロムフリー黒色無機顔料を開発した。
本報では、主に自動車窓ガラス用ガラスペーストとしての特性を紹介するとともに、電子レンジパネル等の産業用、チップ抵抗器の2次オーバーコート用などの各種ガラスペーストへの応用例についても紹介する。
PRパルス電解は周期的に電流を反転させる方法で、高電流部であるスルーホールのコーナー部のめっきが溶解され、低電流部であるスルーホール内部のめっきは溶解されにくいため、高スローイングパワーが得られると言われている。
しかし、PRパルス電源は直流電源よりもコストが高いこと、電解条件の見極めが難しいこと、リバース条件(電流、時間)を強くすると、めっき外観や皮膜物性が低下することから、あまり普及していないのが現状である。
そこで、我々は、PRパルス電解で得られる優れた性能を維持しつつ、前述した問題点の改善に取り組み、トップルチナPPRを開発した。本報では、トップルチナPPRの効果及びメカニズムについて紹介する。
フレキシブルプリント配線板材料であるCCLは、ファインピッチ化が進むに伴い、スパッタ材が主流となってきた。スパッタ材は接着剤層を介さず、直接メタライジングするため、ポリイミドフィルムの特長である耐熱性を最大限に生かせる構成になっている。しかしながら大がかりな真空設備を必要とするため莫大な費用がかかり、且つ生産性も低いことから、湿式法によるメタライジングが注目されている。当社と荒川化学工業?はオールめっき法によるシード層形成方法に着手し、専用のめっきプロセスおよびフィルム素材を開発することで、高い密着性を有するシード層付きポリイミドフィルムの作製に成功した。今回新たにNiシード層除去剤を開発し、セミアディティブに対応したプロセスを構築することができた。本報ではシード層形成からパターンエッチングまでの一連のプロセスについて説明する。
配線基板やパッケージ等の接続端子は、その使用目的や接合法により、種々の表面処理が行われている。その中で、はんだおよびワイヤーボンディングの接合信頼性を高めるため、無電解Ni/AuやNi/Pd/Auめっきが検討され、実用化されている。
しかしながら、今後の電子機器等の小型軽量化により、接続端子は更に微細化すると予想され、Niめっき皮膜の厚みはファインパターン性の弊害となるものと考えられる。
このような背景から、耐熱性とファインパターン性に優れた新たなめっき処理工法としてCu上への直接無電解Pd/Auめっきプロセス『トップパラスプロセス』を開発した。
本報では、新規な触媒付与液『パラスプレコート』の開発コンセプト、メカニズムならびに、トップパラスプロセスにより得られる皮膜の特性について報告する。
クロムめっきはその優れた外観,耐食性,耐磨耗性から幅広い分野で使用されている。しかし,6価クロムめっきは浴中に多量のクロム酸を含有し,めっき作業時に発生するミスト中にも6価クロムが含まれることが環境上の問題である。このことから近年,装飾用途については代替技術である3価クロムめっき浴への転換が進んでいる。
ここでは,電位-pH図からクロムめっきについての考察を行い,6価クロムめっきとの比較を行いながら3価クロムめっき浴のいくつかの特徴について述べる。また,得られた3価クロムめっき皮膜の外観,耐食性,皮膜組成や皮膜構造,ビッカース硬度などについて6価クロムと比較した結果を示す。
さらに,3価クロムめっき浴を用いた厚めっきについても検討を行い,硬質クロム代替技術としての課題点について考察を行い,最後に3価クロムめっき浴の管理方法について示す。
多彩な色調に仕上げることができるアルマイト染色処理は、工業的に広い分野で利用されている。しかしながら、有機染料を使用しているため、光があたると退色する問題があり耐光性の向上が求められている。
そこで、我々はラジカル捕捉作用のあるヒンダードアミン系光安定剤に着目し、水溶性の耐光性向上剤-TACサンブロック77-を開発した。
本報では、複雑な染料の光退色機構とDenisov cycleと呼ばれるヒンダードアミン系光安定剤のラジカル捕捉機構について述べる。更に、TACサンブロック77の耐光性能およびその使用方法について紹介する。
PTFEのコンポジット無電解ニッケルめっき液には、PTFEをめっき液中に分散させ、また、それをめっき皮膜中に共析させるため、これまでPFOSと呼ばれるフッ素系の界面活性剤が一般的に使用されてきた。
しかし、近年、このPFOS化合物が「自然界や生体内に蓄積され、様々な障害をもたらす可能性がある」と懸念されるようになり、EU、日本、米国をはじめ、世界各国で規制物質の対象として検討されるようになってきた。
そこで弊社では、PFOS規制に対応したPFOSフリ-のPTFEコンポジット無電解ニッケルめっき液の開発を行い、従来浴(PFOS含有品)と同等の性能を有するめっき液トップニコジットTFEを開発した。
本報では、PFOS規制の概要について取り上げるとともに、新たに開発したトップニコジットTFEの使用条件や性能について紹介する。
自動車用セラミックカラーは、自動車窓ガラス(合わせガラスおよび強化ガラス)の車内側外周部に印刷し、曲げ,強化加工時に焼き付けられる。
その要求特性は、ボディへの貼り付けを目的とした有機系接着剤の紫外線による劣化防止のための遮蔽性と、はみ出し部分の隠蔽性が主である。先行する自動車業界の環境対策に従い、自動車用セラミックカラーも環境への対応が求められた。
弊社では、鉛の代替としてビスマスまたは亜鉛を主成分とした無鉛ガラスの開発に取り組み、無鉛自動車用セラミックカラーが1997年に乗用車に採用された。
10年後の2007年度には弊社自動車用セラミックカラーの国内出荷量に対する無鉛化率が、95%にまで達した。
また、従来使用している黒色無機顔料は、3価クロム化合物を含有しているが、紫外線暴露等の様々な使用環境により、3価クロムが6価クロムへ変化する可能性が否定できない。
そこで、クロムフリー黒色無機顔料の開発に着手し、自動車用セラミックカラーに要求される特性を満足したMnOを主成分とするクロムフリー黒色無機顔料の開発に成功した。
昨今のビルドアップ配線板にはめっきによるフィルドビア、いわゆるビアフィリングめっきが多く利用されている。当社はそのビアフィリングめっきを達成するための硫酸銅めっき添加剤の研究開発に1999年頃から着手し、2000年に「トップルチナBVF」、翌2001年に「トップルチナα」を開発、世に送り出した。トップルチナαはそのビアフィリング性能、貫通スルーホールやパターンめっきに対応する適用範囲の広さ、さらにめっき浴を迅速にリフレッシュできる「トップルチナRF」の開発によって、非常に多くの採用をいただくことができた。その後、不溶性陽極仕様に最適化した「トップルチナFA」、ビアフィリングと優れた均一電着性を両立した「トップルチナNSV」と次々に新製品を開発、多くの採用実績を獲得するに至っている。
今回はその当社のビアフィリングめっき用添加剤について紹介する。
BGA(Ball Grid Array),CSP(Chip Size Package)等のパッケージ基板における最終の表面処理として、無電解Ni-P/Auめっきが採用されている。
しかし、無電解Ni-P /置換Auめっきプロセスは、置換Auめっき時において下地Niの溶解を伴うため、Ni-P皮膜に過度の腐食が発生した場合、はんだ接合性に悪影響を及ぼすことが指摘されており、この対策として下地Niへのダメージ低減や耐熱性を改善可能な無電解Ni-P/Pd/Auめっき工法を推奨している。
本報では、無電解Ni-P/Au、Ni-P/Pd/Auの各プロセスについて下地Ni-P皮膜中のP含有率とPbフリーはんだとの接合強度について比較検討を行った結果を中心に紹介する。また、無電解Ni-P/Pd/AuめっきにおけるPdおよびAu膜厚とAuワイヤーボンディング性の関係についても検討を行ったので報告する。
ピュアコンシステムは、有機不純物を簡易的に可視化(モニタリング)する技術である。めっき液などの有機不純物の汚染割合や活性炭処理による有機不純物の浄化効果が確認可能であり、表面処理に関わる多くの処理水における有機不純物の測定が、分光光度計を用いた簡易的で安価な方法で可能となる、現場管理向きの技術である。まためっき液から有機不純物を除去する活性炭フィルターは、不純物の吸着速度および吸着量の多い繊維状活性炭を原料としている場合が多く、ピュアコンシステムを用いることで混入する不純物に合わせた活性炭を選択することが可能となった。今後は、使用目的、条件に合わせた活性炭フィルターの選定が重要なポイントになると思われる。
無電解Ni/Auめっきは、電子基板の最終表面処理として、はんだ接合、AuWB(ワイヤボンディング)用途に広く使用されている。プリント基板は、セラミック、リジッド、FPC等に大別され、当社では、それぞれに必要な特性を兼ね備えた無電解Ni/Auめっきの得られるプロセス開発の取り組みを行ってきた。
FPC基板は薄く柔軟性があるが、FPC基板の銅配線に対して無電解Niめっきや電解Niめっきを行うと、電極部のCuの延展性に追従できず、割れ(クラック)が発生する問題点がある。液晶ドライバー搭載用基板等では、配線は非常に微細であり、組み立て時には折り曲げられるためにこのような問題が発生しやすい。
当社では、フレキシブル基板に最適な、屈曲性に優れた無電解Niめっき膜の開発に従来から取り組みを行い、開発浴を既に実用化している。
本稿では、高Pタイプの無電解Niめっき「ICPニコロンSOFシリーズ」および中Pタイプで耐折性に特に優れた「ICPニコロンFPF」について、めっき皮膜の特長と耐折性のメカニズムについて報告する。
次亜リン酸Na を還元剤とする環境対応型の無電解Cu-Ni 合金めっき浴で、従来の無電解銅めっき浴では困難であったポリイミドフィルムに対する高い密着性を実現しました。
近年、EUの ELV指令、RoHS指令の有害物質規制により、重金属として鉛、水銀、カドミウム、6価クロムが規制物質の対象となっている。
無電解ニッケルめっきにおいては、めっき浴に浴安定剤および光沢剤として重金属化合物、特に鉛化合物が従来から使用されており、めっき皮膜中に微量の鉛が共析することが判っている。そのため、鉛の共析量によってはELV指令、RoHS指令の規制対象となることから、様々なメーカーより無電解ニッケルめっき液の鉛フリー化への要望が相次いでいる。
そこで、当社では数年前より無電解ニッケルめっき液の鉛フリー化に着手し、ELV指令、RoHS指令に対応できる鉛フリーの無電解ニッケルめっき液「トップニコロンLFシリーズ」を開発してきた。
さらに今回は、ELV指令、RoHS指令だけでなく、将来の重金属規制にも対応できる重金属フリーの無電解ニッケルめっき液「トップニコロンGEシリーズ」を開発したので紹介する。
プリント配線板のファイン化、高多層化に対応すべく、ビアフィリングめっきの量産が行われている。しかし、安定性に乏しく、ブライトナーの経時変化に伴い、埋込性が低下する問題が生じている。
また、スルーホールを有する汎用基板は、生産性向上を目的として、高電流密度による生産が行われている。
しかし、長期間連続電解を行った場合、(1)アノードスラッジが堆積し、めっき膜厚のバラツキが生じること、また、(2)スラッジによる皮膜のザラつきが懸念されることから、定期的にアノードメンテナンスを行う必要がある。
これら埋込性の低下、スラッジの発生は、含リン銅アノード表面に生成する一価銅化合物が原因であると報告されている。我々は、この一価銅を溶解することにより、生産性を改善する硫酸銅めっき用添加剤「トップルチナHG」を開発した。本報では、トップルチナHGの効果、メカニズムと使用方法について、紹介する。
現在の樹脂めっきプロセスは、クロム酸-硫酸混合水溶液によるエッチング処理が必要不可欠である。しかし、環境汚染などの問題からクロム酸エッチングの代替が要望されている。
代替候補としては過マンガン酸が挙げられており、従来の酸性の過マンガン酸水溶液は高いエッチング能力を示すが、液安定性が悪く連続使用ができなかった。弊社では、その課題を克服した液安定性が良好な酸性の過マンガン酸エッチング液を開発した。
本報ではその開発した酸性の過マンガン酸エッチング液によりエッチング処理を行い、さらに排水負担の小さい直接硫酸銅めっき法によりめっきを施す樹脂めっきプロセス、「CRP-MARSプロセス」について紹介する。
ITO透明導電性薄膜の回路は、ガラス基板上にスパッタリング法などで成膜した後、さらに化学エッチングによってパターン形成される。この方法は大掛かりな装置と多くの工程を必要とする高コストプロセスであるため、これに代わる製造方法の開発が望まれている。
製造方法の中でもペーストのスクリーン印刷法による塗布焼成は、塗布装置と焼成炉を必要とするだけであり、またパターンニング工程を省略することができるという利点を持つ。製造コスト的に有利であるばかりでなく、大面積基板上への形成も容易である。
本稿では、インジウムおよびスズの錯体を前駆体とする固相熱分解反応によって、酸化インジウムおよび酸化スズの複合金属酸化物であるITOのナノ粒子を新規に合成し、そして、スクリーン印刷法による透明導電性薄膜の回路形成を目指し、新規開発したITOナノ粒子ペースト“ナノディスパーITO”について述べる。
奥野製薬工業株式会社は1944年の株式会社設立以来60年が経過し、人で言う還暦をすぎました。この間、表面処理薬品部門、無機材料部門、食品添加物部門において業界でも確固たる地位を築くことが出来ました。
これは社是である「本当に愛される製品をつくり、みんなに愛される人になれ」のもと先輩社員、現社員の奮闘、精励のたまものでしょう。
しかしながら、時代が推移していくに従って、我々だけが、利益を出してそれで万々歳という時代は終焉を迎え、弊社の製品を通じて積極的に社会貢献を果たす時代となりました。その積極的な社会貢献のひとつが、環境対策への取り組みであります。
弊社も、1998年に時代の流れをふまえ、現社長を中心にして放出工場で環境マネジメントシステムISO14001の認証取得に向かってキックオフしました。1999年放出工場サイトで認証取得、2001年には全社サイトで認証を取得いたしました。
ISO14001の認証取得の持つ意味は、「我々が製品をつくり、利益を得る事業を行っていく過程において、地球環境に悪影響を及ぼす諸問題を限りなく低減できるように実践する。」という決意であります。
1998年のキックオフ以来、弊社の環境対策への取り組みとその結果についてまとめましたので、報告いたします。
品質管理は、JIS(日本工業規格)で、顧客に提供する商品およびサービスの質を向上するための、企業の一連の活動体系と定義され、わが国の品質管理は、製造業の現場に広く普及して、日本製品の品質が大きく向上したことに貢献したといわれている。しかし、変化激しい時代のニーズに沿った品質管理(品質保証)へ、変わって行かなければ、生き残れなくなってきた。
顧客が満足して買ってくれる品質の製品やサービスを早く、迅速に供給すること、顧客が要求する性能を満足する製品検査を実施すること、お客様の苦情を生かし、同様な苦情を二度と発生させないようにすることが現在、求められている。
さらに、人の安全と健康を確保し、地球環境を保護する動きが活発する中、化学物質の情報を一元的に利用できるシステムを構築することも重要である。また、日本企業が海外へ進出する中、海外への製造拠点のシフトも積極的に推進していかなければならない。
表面処理技術は、自動車、機械、電子、電気、半導体産業などの種々の業界で多用されており、製品の機能向上に欠かせない技術となっている。また、最近ではさらなる製品の品質向上が求められる半面、低コスト化の要求が強く、表面処理薬剤の高性能化とともに処理薬剤、処理条件の管理などが重要となっている。
弊社では研究開発部門とは別に営業部門内に主に技術的なフォローを実施する技術課を設置している。表面処理営業部技術課は、大阪、名古屋、東京を本拠地として各地区のお客様に製品の技術的な説明、生産ラインの技術フォローを行なっている。
弊社技術課の製品開発につながる技術フォローを含めて技術フォローの現状と今後について述べる。
プラスチックめっき処理工程にはクロム酸エッチングやクロムめっき、および化学ニッケルめっき液の浴安定剤には鉛が使用されているが、WEEEやRoHSには規制されていない。
弊社では将来プラスチックめっきへの環境規制の制定に先駆けて、特に有害物質を含まないプラスチックめっきプロセスの工業化を目標としている。化学ニッケルめっき工程を用いない直接硫酸銅めっきプロセス(CRPプロセス)と、現在開発中のクロム酸エッチングフリーめっきプロセスとメカニズムを中心に紹介する。
環境問題が注目されている近年においては、「生命と地球に優しい技術」の開発、実用化が望まれている。
特に、欧州などが規制対象物質を指定したことにより、それらを含有する製品の製造から廃棄(再利用)までの段階で、対応技術と代替技術の開発、実用化が進められている。
弊社では、3価クロムを用いた亜鉛めっき用化成処理剤として、ESコートシリーズを製品化し、市場への展開を進めている。ESコートシリーズは、青色、黄色、黒色のタイプがあり、何れも、従来の処理設備が使用可能で、幅広いニーズに対応できる。
本報では、各種亜鉛めっき皮膜に対応可能な黒色のESコートブラックSOPを中心に述べる。
近年、EU指令(ELV、WEEE、RoHS指令)の有害物質規制により、鉛、水銀、カドミウム、6価クロムおよび臭素系難燃剤のPBB、PBDEが規制物質の対象となり、表面処理業界においては、鉛フリー化や6価クロムフリー化への対応が必要となってきている。
無電解ニッケルめっき液においては、安定剤および光沢剤として使用されている鉛が、めっき皮膜中に取り込まれるため、その共析量によってはEU指令の規制対象となる可能性がある。そのため、様々なメーカーより無電解ニッケルめっき液の鉛フリー化への要望が相次いでいる。
弊社では、数年前より無電解ニッケルめっき液の鉛フリー化に着手し、EU指令に対応可能な鉛フリーの無電解ニッケルめっき液「トップニコロンLFシリーズ」を開発してきた。
さらに、今回、EU指令だけでなく、将来の重金属規制も見据え、安定剤に重金属を使用しない無電解ニッケルめっき液「トップニコロンGEシリーズ」を開発したので紹介する。
近年、含りん銅陽極表面で生成する1価銅が光沢剤を変質し、めっき性能に悪影響を与えることが知られている。特に、ビアフィリングめっきにおいては、光沢剤の変質がフィリング性を低下させる要因となり、量産稼働における最も大きな障害であった。1価銅の生成を伴わない不溶性陽極は、安定したフィリング性を維持する有効な手段であり、さらに、ザラ、ノジュールの低減、析出皮膜の均一化など次世代ファインパターン基板に対応できる。これらの利点から、ビアフィリングめっきにおける不溶性陽極の適応は、今後、さらに増加するものと予想される。
本報では、不溶性陽極の使用に最適化することで長期安定稼働を可能とした添加剤であるトップルチナFAの基本性能と使用上の注意点について紹介する。
無電解Ni/Auめっきは、プリント基板、パッケージ基板の最終表面処理として、はんだ接合、AuWB(ワイヤボンディング)用途に広く使用されている。近年、携帯機器の小型化、軽薄短小化が進み、高密度実装を実現するための電極面積は著しく小さくなってきている。このため、無電解Ni/Auめっき皮膜をはじめとする電極への表面処理技術の高信頼性要求は益々高まっている。無電解Ni/Auプロセスにおける要求特性としては、ファインパターン性、Niめっきにおける柔軟性および高耐食性、Auめっきにおける被覆力や耐熱性の向上等が挙げられる。
弊社では、上記の様な要求特性や、環境負荷物質の使用低減、および難素材へのめっきプロセスに対して取り組みを行い、従来プロセス以上の性能を有する薬液を開発したので紹介する。
プリント基板上への銅回路形成は、無電解銅めっき法により行われており、その密着性はエッチング処理により形成された基板表面の起伏によるマクロなアンカー効果により得られている。しかし、将来的には回路の微細化にともない表面粗さの小さい平滑基板上への回路形成方法が要求される。
ZnO膜を化学的に製膜することができるテクノクリアプロセスでは、製膜条件による皮膜構造の制御が可能であり、ナノポーラス構造を有するZnO膜を低温で不導体表面に直接製膜することができる。我々はこのナノポーラス構造ZnO膜をバインダー層として利用することで、平滑なガラス基板上に高密着性銅薄膜を無電解めっき法により形成することに成功した。
めっき液の分析、めっき膜の観察、めっき膜の構造解析の3つの観点から、めっきへのアプローチを試み、各種機器の基本的な特徴と分析事例を紹介する。
めっき液の構成成分である金属、金属以外の主成分、微量成分の分析について述べる。金属分析は原子吸光分析(AA)装置、高周波誘導結合型プラズマ分析(ICP)装置について、金属以外の主成分分析は、液体クロマトグラフ(HPLC)イオンクロマトグラフ(IC)、キャピラリー電気泳動(CE)装置について、微量成分はCVS分析装置について原理および特徴等を解説する。
めっき膜の表面および断面観察手法として、各種顕微鏡が用いられている。本稿では、光学顕微鏡である実体顕微鏡、金属顕微鏡、レーザー顕微鏡を、電子顕微鏡である走査型電子顕微鏡(SEM)および透過型電子顕微鏡(TEM)を、またプロープ顕微鏡(SPM)や走査イオン顕微鏡(FIB-SIM)を、その特徴と観察事例について紹介する。
めっき皮膜に要求される物理的、化学的特性は皮膜の構造と密接な関係がある。金属、セラミックなどの結晶構造を解析するために用いられる装置であるX線回折装置(XRD)についての解説。また、固体の最表面に存在する元素およびその元素の化学結合状態を分析することが可能なX線光電子分光分析装置(ESCAまたはXPS)について紹介する。
原子吸光光度計、キャピラリー電気泳動装置、イオンクロマトグラフィー、レーザー顕微鏡、走査型電子顕微鏡、走査イオン顕微鏡、X線回折装置、X線光電子分光分析装置の特徴を紹介する。
名古屋地域における産学官連携による表面処理技術の向上事例を紹介する。
表面処理業界が抱える課題は環境規制への対応技術開発と技術・技能を継承し、発展させることができる人材の育成である。これらの課題解決に産学官連携を有効に活用する必要がある。
めっき技術を通じた産官学連携の事例を公的研究機関に在籍していた筆者の目線で紹介した。また、めっき技術は先端産業に欠くことのできない要素技術となっているが、これからのニーズに対応するめっき技術について、筆者の予測を含めて概説した。
近年、国公立大学の法人化や国策としての産業技術政策の変遷により、産官学連携の推進と研究成果の企業への技術移転が活発化している。当社のような開発型企業の技術力を高めるには、社内での独自開発が重要であることは言うまでもないが、外部機関との連携で既に萌芽的技術を活用することが合理的である。
本稿では、当社の産学官との連携による取り組み姿勢、また、異業種交流、地域コンソーシアム等への参画事例、関連学会との活用状況を紹介し、当社の研究開発や新製品創出の根幹となる開発理念を述べる。
世界経済の発展に伴い、環境問題が我国だけではなく、世界各国に広がっている。オゾン層の破壊、地球温暖化、酸性雨による腐食破壊、湖沼の汚染、土壌汚染まで極めて深刻な状況に陥っている。かつての日本においても、水質汚染(水質汚濁防止法.;(1970年12月25日 法律第138号)施行 1971年6月24日)、大気汚染が激しかった1970年台、世界人間環境会議(ストックホルム会議、1972年)が開催され、先進国においては、経済成長から環境保全への転換、途上国においては開発の推進と援助の増強が重要であるとの宣言がなされた。そして、20年後の1992年、リオ・デ・ジャネイロ(ブラジル)で国連環境開発会議(地球サミット)が開催され、持続可能な開発のための具体的行動計画として、「アジェンダ21」等が採択された。その後、10年間、地球環境問題が国際社会の最重要問題の一つである事が認識され、多くの環境条約・議定書が成立された。さらに、これらの環境問題の対応上で生ずる諸問題対策の為、2002年持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSC)が開催され、今後の取り組みの強化が図られた。
本稿は、世界的な環境規制の動向を調査して、先ず、現在、最も環境規制で、先行している欧州連合(EU)のWEEE&RoHSの内容と状況、自動車関連でのELV規制、新規法案のREACHを調査した。次に日本の環境規制の現状、その他の国の環境規制について述べた。
次にこれらの規制に対する、現状の進捗状況と問題点を整理し、表面処理業界における今後の対応を論じた。
弊社では地球環境保護を目的として環境対応型めっきプロセスを開発している。本稿では(1)クロム酸エッチャントの代替品として過Mn酸塩を用いた場合のめっきプロセス、(2)新規PA/ABS樹脂によるクロム酸エッチングフリープロセスとして、「トップF-CAPプロセス」と密着メカニズム、(3)樹脂めっき用鉛フリー化学ニッケルめっき液として「化学ニッケルSEP」について紹介する。
自動車や電気電子産業界では、最近の地球環境の保全に対する関心の高まりによる各国での鉛使用に関する法規制化、特にEU(欧州連合)に見られるELV指令、WEEE指令、RoHS指令への対応に迫られております。表面処理業界においても鉛フリーやクロムフリーへの対応が急務になっています。
無電解ニッケルめっきの液中には、安定剤や光沢剤という役割で鉛化合物が数ppm添加されており、皮膜中にも取り込まれますので、使用用途によりましては鉛フリー化への代替が必要になりました。
従来の無電解ニッケルめっき製品の性能をそのままに、鉛安定剤を使用していない、トップニコロンLFシリーズを開発いたしました。本稿では、EU指令の概略とトップニコロンSA-98-LFとトップニコロンTOM-LFの特性を中心に鉛フリー無電解ニッケルめっき製品、及びクロムフリー後処理剤について製品紹介をいたします。
従来より使用されている6価クロメートは、安価で容易に高耐食性皮膜を得る技術として確立されている。しかし、6価クロムは土壌汚染、水質汚染、人体との接触によるクロムアレルギー、鼻中隔穿孔の原因だけでなく、発ガン性の疑いがあるとされている。EU指令では6価クロムが規制対象物質となり、日本国内においても対応が急務となった。
弊社では、6価クロムフリー技術として、3価クロムを使用した亜鉛めっき用クロメート処理剤を開発した。
ESコート(白色)は有色6価クロメート(黄色)と同等以上の耐食性を有し、10数社で量産が行われている。ESコートは染料による着色が可能であり、赤色、青色、黄色などに着色できる。
ESコートブラックSOPはトップコート処理を施すことで黒色6価クロメートと同等以上の耐食性を有する。耐食性および黒色外観の制御はクロメート皮膜中のコバルト吸着比率を制御する。すなわち、クロメート液中の成分を管理することによって可能である。
3価クロメートは有害な6価クロメートを含有せず、環境に配慮した大変優れた技術である。
近年のエレクトロニクス技術の進歩は著しいものがある。この技術進歩を支える技術として、パッケージや実装技術があるが、この技術進歩も限界に近づきつつあるため、これを打ち破るブレークスルー技術が求められている。
本稿では、実装技術の近未来で必要とされている種々の技術課題や高密度パッケージの製造方法、さらには、SIP(System In a Package)における受動部品や薄シリコンチップの埋め込み技術などについて解説する。これらの技術におけるめっき技術は、銅めっきによる穴埋め技術、はんだめっきやはんだ付けにおけるリフロー後の気泡の生成、ニッケル/リンめっき膜とはんだ界面の合金生成など、製造技術として、また、信頼性技術として極めて重要である。これらの技術について、その反応機構に言及しながら問題を明らかにする。
最後に、新しいナノプレーティングの試みや高放熱性のカーボンナノファイバー分散ニッケルめっきの可能性について紹介した後、いわゆる機能水の利用や薬品使用の低減など、めっき技術がめざす環境調和型のエコテクノロジー化の方向性について議論する。
樹脂封止フリップチップ実装とビルドアップ配線板は、1991年に発表されセンセーションを巻き起こした。パッケージングの役割を”半導体チップ間を最短・最低コストで接続すること”と定義し、その解として開発されたベアチップ実装を構成する二つの重要な技術である。フリップチップ実装を低コスト化するため、セラミック基板の代わりに熱膨張係数の高い有機材料基板を使用可能としたのが樹脂封止フリップチップ実装であり、チップと基板の間をエポキシ樹脂で接合することにより、フリップチップ接続部への応力を分散することに成功し、熱膨張係数の高い基板を使用したにも関わらず接続部の寿命を飛躍的に延ばした。ビルドアップ配線板は、機械ドリルを使用したスルーホールの代わりに、マイクロビアホールを採用した高密度のビルドアップ配線層を備え、フリップチップによる多数の接続部からの配線の処理を可能とした。これらのフリップチップ実装を低コスト分野に解放した二つの技術についてキーポイントを解説する。
携帯電子機器の小型化によるプリント基板の軽量化、ファインパターン化、高多層化にともない、基板の使用素材は大きく変化している。また、環境への配慮からハロゲン物質を含有しないハロゲンフリー基板の採用も多く見受けられる。
現在、基板の使用素材の変化により無電解銅めっきプロセスで求められるニーズも多様化している。今回、市場で求められている最新ニーズに着目し、適応する無電解銅めっきプロセスを開発した。それが当社第2世代無電解銅めっきプロセスATS(Advanced Technology Solutionの略)シリーズである。ATSシリーズは、従来品にはないめっき性能を有する。本報ではATSシリーズの特長について報告する。
無電解Ni-PめっきのP含有率が、鉛フリーはんだのSn-Ag、Sn-Ag-Cu、Sn-Ag-Cu-Bi、Sn-ZnおよびSn-Zn-Bi系はんだとの接合強度におよぼす影響について調べ、Sn-Pbはんだと比較した。はんだ濡れ性はSn-Pbはんだが最も優れた。Sn-Pbはんだでは、無電解Ni-P膜のP含有率が高くなると、はんだ接合強度が低下したが、Sn-Ag、Sn-Ag-Cu、Sn-Zn系はんだは高い強度を示し、P含有率変動による影響が少なかった。Sn-Ag-Cu-Bi、Sn-Zn-Bi系はんだではBiを含有しないはんだよりも接合強度が低下した。
食品の味・香り・食感・色・保存性などの要素を科学的にとらえる研究開発を通して、おいしい加工食品の一助となる製品・技術・情報を提供することが当社の基本コンセプトです。本報では、新技術の中から、作りたての色の保持というニーズに応えた『食品の変色抑制技術』、新しい食感改良剤というシーズに結びついた『粉末素材の粉砕加工技術』など、奥野製薬工業が取り組む「おいしさ」への追求と想いを新技術のエッセンスと共に紹介します。
ペプチドの分子量に着目し、高分子、低分子という分子鎖長の異なるペプチドを主成分とする小麦たん白分解物を開発しました。開発品は、低分子のペプチドから構成される一般的な調味料系たん白分解物とは異なり、単なる味の付与だけでなく、コクや深みの付与、スパイス感や辛味の向上効果を示します。本報では、小麦たん白分解物の風味改善メカニズムや、近年注目されている減塩食品を始めとするおいしさ向上についてのアプリケーションを紹介します。
高分子、低分子という分子鎖長の異なるペプチドを主成分とする小麦たん白分解物は、風味改善に加えて、食品物性の改善効果も示します。元々、ペプチドには界面活性作用による物性改善の機能がありますが、開発品は特異な分子鎖長によって界面活性作用が増強され、優れた起泡性と乳化性を示します。本報では、ビールのような泡を付与した飲料、ボリュームのあるメレンゲ、とても滑らかで油染みの少ないキャラメル、アイスクリーム類の融解抑制など、一般的なたん白素材やペプチドでは見出せない、物性改良効果を紹介します。
多糖類、油脂、還元糖を作用させた改質小麦たん白『プロフェクト』シリーズは、耐酸性、結着性、伸展性など、従来の小麦たん白とは異なる機能を持ち、食感改良に加えて、食品の生産適性の向上用途としても利用されています。本報では、まず改質たん白の基本特性を説明、その後、ビスケットの歯切れ改善や生産時の機械への付着抑制、麺の弾力付与や生産時の麺切れ抑制など、菓子・麺の加工プロセス上のトラブル改善例についても紹介します。
ベーキングパウダーは、菓子に使う、膨らませるだけの添加物だと思っていませんか?ベーキングパウダーの炭酸ガスを最適なタイミングで効率的に発生させることにより、天ぷら衣の吸油調整、唐揚の歩留まり向上、即席麺の湯戻り促進など、菓子以外にも幅広い食品に効果を発揮します。本報では、奥野製薬工業が長きにわたり培ってきた『コーティング技術』を駆使して開発したベーキングパウダーについて、その特性と多様な食品への応用展開を紹介します。
食品中の微生物の増殖を抑制する制菌剤は、加工食品の発展に大きく貢献してきました。一方で、一部の保存料を除く制菌成分は、食品の味に影響を及ぼし、加工食品の開発者を悩ませてきたことも事実として存在します。当社は、いち早くこの問題に取り組み、味覚に影響を及ぼし難い製剤を開発し、タイプの異なる『デリブレンド製法』、『デリ匠味製法』、『デリ雪華製法』を確立してきました。本報では、加工食品業界における制菌剤の変遷と当社の対応、および取り組みについて紹介します。
平成28年9月現在、世界最大のレシピ検索サイト「クックパッド」では、全247万レシピのなんと22%を占める約55万種類の卵料理が紹介されている。日本人の卵好きをよく表し、卵が優れた栄養機能を有し、調理や食品加工に適する物性機能を有するためであろう。卵の主な調理物性機能としては、卵白の加熱ゲル化性、起泡性、および卵黄の乳化性があげられる。これら物性機能はいかに発現されるのか? 20世紀後半、食品科学的な研究が進められ、卵のゲル化性や起泡性や乳化性の発現メカニズムが分子レベルで解明された。そして21世紀は、単に固まる、泡立つ、乳化するだけでなく、どのように固めるか、泡立てるか、乳化させるかといった物性機能の改変研究が注目されている。本稿では、私が卵の研究を初めて約38年、食品企業と大学の研究室で行った、透明卵白ゲル、乳化性卵白、逆温泉卵、黄身返し卵、おでんの卵など、古くて新しい卵の調理物性改変研究を紹介する。
近年、健康志向の高まりにより、減塩に対する消費者意識は高まっています。減塩食品の食塩代替物として塩化カリウムが一般的に使用されますが、塩味強度の不足や後味の不快味等、味質上の欠点があります。そこで弊社は塩化カリウムの味質を改善した「ぽたしおシリーズ」を開発しました。本稿では、ぽたしおシリーズの開発経緯と独自技術による塩化カリウムの味質改善メカニズム、おいしい減塩食品開発のためのアプリケーション例をご紹介します。
加工食品に求められる“ 美味しさ” には、見た目、食感など様々な要素があり、麺類では、ほぐし易さが美味しさの指標の一つになります。弊社では乳化剤および、植物性たん白質の改質技術との融合により、練り込みで利用できる麺用ほぐれ剤について開発を進め、製品化するに至りました。本稿では、練り込み用ほぐれ剤「パラレルきわみ」の特長をはじめ、麺類のほぐれ性向上についてご紹介します。
蒸しケーキ、蒸しパン生産時の課題の一つに加熱後の蒸し縮みが挙げられます。その改善のためには蒸し条件や膨脹剤の変更等が検討されますが、各々最適化までの作業は煩雑で長期化しやすく、開発スピードが鈍化する欠点があります。そこで弊社は、蒸しアイテムに適したベーキングパウダーの提案とともに、蒸し縮み抑制のための改良剤を開発しています。本稿では、蒸しケーキ、蒸しパンにおける膨脹剤の影響と改良剤の効果をご紹介します。
加工食品の保存性を確保し安全な食品を消費者に提供するために、制菌剤は必要不可欠な存在です。また、微生物制御による食品の保存性の向上は、賞味期限の延長に寄与し、食品の廃棄ロスの削減に貢献するものと考えます。弊社では、それらニーズに応えるべく、種々の食品に適した製剤開発を行っています。本稿では、各制菌成分の特長について、保存料「ポリリジン」を中心に、その有効性・有用性についてご紹介します。
小麦粉を水洗することで分離できる活性グルテンは、パンや麺など様々な加工食品の品質改良剤として幅広く利用されています。弊社では、以前よりこの活性グルテンに着目し、独自の手法で物性を改良した「多糖類改質グルテン」および「油脂改質グルテン」を開発しています。今回は還元糖により改質した新規改質グルテンである「還元糖改質グルテン」のユニークな特徴およびアプリケーションについてご紹介します。
よりおいしい食感を求めて、 当社では各種タンパクに新しい機能性を付与した新規素材の開発を進めている。植物タンパクの一種である大豆タンパクの持つゲル化力に着目し、多糖類との相互作用およびタンパク改質加工の技術融合によって、特長のあるモチモチした食感を有する改質大豆タンパクを開発した。本稿では、改質大豆タンパクの物性特性をはじめ、麺類の食感向上など食品への応用例について紹介する。
膨脹剤を添加する菓子類に制菌剤を併用する際の問題点として、 重曹と制菌剤中の有機酸が反応しガス発生のバランスが崩れボリュ ームが 低下することや、 膨脹剤と制菌剤から二重に塩類が発生し味覚へ 影響が出ることが挙げられる。これらの問題を解決するために制菌効果の高い有機酸を膨脹剤の酸性剤として使用する独自技術を確立し、膨脹剤と制菌剤の一剤化を可能とした。本稿では、ガス発生バランスや味覚への影響を低減した、制菌効果を有する新規膨脹剤について、応用例を含めて紹介する。
自然界に広く存在する酸化酵素のチロシナーは、 アミノ酸であるチロシンを酸化することで最終的にメラニンなどの褐色色素を生成させる。生成した褐色色素について、人においては皮膚で発生するシミやソバカスなど、また食品においては長期保管時の変色(褐変)の原因となるため、チロシナーゼ活性の阻害成分は現在世界中で広く研究されている。今回、当社製品である焙煎米糠抽出物にチロシナーゼ阻害効果が認められたため、その阻害効果および食品への応用について紹介する。
加工食品の保存性を確保し安全な食品を消費者に提供するために、 制菌剤は極めて重要な役割を担っている。近年、消費者のイメージから脱保存料が進み、安全、安心、さらに、おいしさが高いレベルで求められるようになってきた。当社の制菌剤もそのようなニーズに応えるため、大きな変革を遂げてきた。ここでは、業界の歴史を振リ返リ、安全、 安心だけでなく、おいしさを追及した最新の制菌剤の開発技術を紹介する。
同心多重ノズルを用いて調製する球形のシームレスカプセルは、今日までに口中清涼剤、食品、機能性食品、医薬品、化粧品等へ応用展開されているが、香料精油の様な油性物質から水抽出エキスの様な親水性物質に至るまでカプセル化することが可能となり、その応用範囲は格段に広がっている。さらに、胃では溶けず腸で崩壊する耐酸性の腸溶性シームレスカプセルを開発し、内容物を腸で選択的に放出させることが可能になった。特に、胃酸に弱い善玉のビフィズス菌を三層の耐酸性の腸溶性カプセルに包んだ製剤は、菌が生きて腸に届くことにより、死菌では認められないような整腸作用や各種生理活性を示し、機能性食品や医薬品に応用展開されている。 血液の人工透析患者では、ビフィズス菌カプセルの摂取により便通改善だけでなく尿毒症物質の低減等の新たな効果が認められてきている。本稿では、シームレスカプセルの製法、特性、多方面への応用例を紹介する。
食品業界では、製品の流通形態の発達により、以前よりも商品に求められるニーズも多様化している。特に昨今、コンビニエンスストアーで販売されるチルド洋菓子・デザートの流行で、チルド流通の条件下でも長期間食感の劣化が無くおいしい商品を供給出来る商品開発が必要となってきている。
本稿では、このような製菓・製パン分野でのチルド流通のニーズに対応出来る素材として、おいしさを向上し、ボリュームのアップ、食感の劣化抑制が可能となる油脂改質たん白を利用した素材「プロフェクトCG」について、チョコレートケーキのボリュームアップ、及び低温域でのスポンジケーキの老化抑制を例に挙げて述べる。
また、同様に油脂改質たん白を利用したシフォンケーキ用ミックス粉「トップスイーツCF610」について、①メレンゲを別立てで作らず簡単にワンボールで作製可能、②保形性が良く、釜落ちしにくい製品が出来る、③冷蔵保存での老化が遅い等の特長をシフォンケーキ、シフォンロール、ブッセ等への応用例を挙げて紹介する。
食べ物の“おいしさ”を決定する重要な要素として、色や形などの外観、香り、味、テクスチャーなどが挙げられる。なかでも調味料は食品の味、テクスチャーを整える有効なアイテムの1つとしてこれまでも食品の加工、調理に利用されてきた。
これまで、当社ではより効率的に食味の向上と食感改質効果が得られ、おいしい加工食品が製造できるような調味料製剤の開発に取り組んできた。
本稿では、呈味性と食感改良効果を併せ持った発酵調味料「こま味豊潤」を紹介し、各種食品へ応用した際の品質改良効果について述べる。
菓子の開発現場では、消費者の嗜好を満たす商品創出に加え、保管や流通段階に起こる食感劣化や高騰する原料事情への対応が求められている。本稿では、これら要望を満たし、商品開発をサポートする製品として「プロフェクトGX」を紹介する。
「プロフェクトGX」は、油脂改質小麦たん白を主体に、増粘多糖類も配合した菓子用品質改良剤であり、保湿性や保形性を向上させる。ここでは、マドレーヌの保湿性向上、シフォンケーキの保形性向上、低カロリーケーキの造形性向上、どら焼き、ホットケーキの歩留り向上の各効果について述べる。さらに、カヌレの簡便な調製法についても示す。
現在、ホタテ貝が北海道や青森県を中心に水揚げされ、加工処理後の大量のホタテ貝殻が、海辺に放置され悪臭を放ち、ウロ中に含まれている重金属は深刻な環境汚染を引き起こしている。貝殻の主成分である炭酸カルシウム(CaCO3)は、焼成処理することで酸化カルシウム(CaO)に変化する。抗菌活性の発現は、CaOの生成に起因し、粉末の焼成温度の増加に伴い殺菌効果は大きくなった。ホタテ貝殻焼成カルシウム粉末は、細菌の栄養細胞だけでなく、ストレスに対して著しい耐性を有する細菌芽胞に対しても殺菌効果を示した。また、貝殻焼成カルシウムの抗菌活性は,単なるアルカリ処理(NaOH)と比較するとかなり大きく、pH以外にも抗菌要因が存在することが示唆された。
貝殻焼成カルシウムをカット野菜や果物の除菌・洗浄に応用したところ、効果的に生菌数を低下させることが可能であり、次亜塩素酸ナトリウムに対する優位性が示された。貝殻焼成カルシウムは、食品添加物(ミネラル補給、pH調整剤)として認められているが、食品のシェルフライフの延長にも寄与することが可能である。このようなホタテ貝殻焼成カルシウムは、環境中に放出されても二酸化炭素を吸収しCaOが再びCaCO3に戻る。安全性の高い抗菌剤の開発が求められている今日、このような材料の食品加工プロセスにおける実用化が期待される。
低温下で流通、販売される白飯や弁当類のようなチルド米飯類では、米飯の老化抑制が課題となっている。これまでの研究で、いくつかの成分が老化抑制に効果的であることが見出されているが、不十分であり、さらに効果的な老化抑制素材の開発が望まれている。本稿では、より効果的な米飯の老化抑制製剤として開発中である米飯用乳化油脂「トップブルーミー」の老化抑制効果について報告する。
次亜塩素酸ナトリウムに代わる除菌剤として、貝殻焼成カルシウムが注目されてきたが、水への溶解性の悪さ等が課題となっていた。そこで貝殻焼成カルシウムの水への溶解性向上を検討し、さらに貝殻焼成カルシウムの効果を次亜塩素酸ナトリウムとの比較で検討した。その結果、貝殻焼成カルシウムを2.0%(W/W)溶解させることに成功し、「トップベジエースSLC」として上市した。除菌処理後のカット野菜の官能評価では、次亜塩素酸ナトリウムよりもトップベジエースSLCの方が野菜本来の風味を保持し、良好な結果が得られた。有機物存在下での殺菌効果の検討では、Bacillus subtilis(栄養細胞)、Escherichia coli、Hansenula anomalaに関して次亜塩素酸ナトリウムよりもトップベジエースSLCの方が有機物の影響を受けにくい傾向が認められた。各種食材に対する除菌効果の検討では、いずれの食材に対してもトップベジエースSLC3.0~5.0%水溶液処理で次亜塩素酸ナトリウム200ppm水溶液処理と同等以上の除菌効果が認められ、特に大腸菌群に対して高い除菌効果を示した。
赤ワインに豊富なポリフェノールであるレスベラトロールの神経様培養細胞のPC12細胞及び神経系の老化促進マウスであるSAMP10の肝細胞と神経細胞における影響について、免疫組織/細胞化学的、微細形態学的及生化学的に解析した。PC12細胞の未分化のものと短期間NGF処理で分化させた細胞で、レスベラトロール処理は未分化PC12細胞には障害的に作用したが、分化PC12細胞に対しては神経突起伸展作用があり、神経成長因子様作用を示した。SAMP10の肝臓においてレスベラトロール処理は肝細胞の脂肪滴を減少させ、クッパー細胞を活性化させた。肝細胞発現蛋白質で、レスベラトロールは細胞機能促進に関与するものはその発現を増加させ、細胞機能低下に関係するものは減少させた。同様にSAMP10の中枢神経系においては、レスベラトロールは神経老化マーカーのリポフスチン顆粒の出現頻度を減少させ、神経機能の活性化と関連する蛋白質はその発現を増加させ、老化/神経変性疾患で増加する蛋白質は減少させた。以上より、レスベラトロールは腫瘍性の細胞には障害的に、正常の分化した細胞には保護的に作用し、その老化や変性から守る働きをもつと結論される。
活性酸素は体内に侵入した菌を殺すために白血球(特に好中球)より産出される。その量が過剰な場合、細胞を傷つける。また、脂肪を酸化し過酸化脂質を作り、血管系の障害の原因となる。それ以外の活性酸素発生の要因として、ストレス、飲酒、タバコ等が挙げられる。これらの活性酸素にはスーパーオキシド、過酸化水素、水酸ラジカルがあり、また、紫外線を浴びた場合にも皮下組織にある酸素が一重項酸素という活性酸素に変化し、それがシミ、しわの原因となる。弊社製品デスミー(焙煎米糠抽出物・焙煎大豆抽出物)はこれらに対して有効な除去剤である。化学的に作り出した活性酸素を除去するだけでなく、ストレスを与えたラットによる生体においても実証を行なった。これらの結果について詳細を紹介する。
食品業界では消費者の様々なニーズに対応しながら、製品開発が行われ、新しい市場が開拓されている。製菓・製パン関連でも同様に、その季節や時代のトレンドを作りながら、新しい製品が開発されている。食品へおいしさを付与することができ、その品質を保持する事が可能な素材開発の要望は年々高まっている。当社では、素材としてグルテン(小麦タンパク)に着目し、様々な処理方法で素材の改良を試みてきた。その中で、油脂によりグルテンを改良する事で、新しい機能性が付与される事を見出し、食感改良や物性改良に利用できる素材として検討した。本稿では、製菓・製パン関連食品で新しい機能性を示す素材としての油脂改質タンパクと、それを配合した製菓向け素材「プロフェクトCG」の効果について紹介する。
鶏卵は古くから食品および食品素材として利用されている。人類は数多くのたまご料理や鶏卵利用食品を開発し豊かな食生活に役立ててきた。これは、鶏卵が優れた栄養性を有することと、鶏卵が調理や食品加工に適する種々の機能特性を有するためである。
食品分野で利用される鶏卵の主要な機能特性としては、卵白の加熱ゲル化性と起泡性、および卵黄の乳化性があげられる。鶏卵に加熱、起泡、乳化などの物理操作を加えると、その卵白蛋白質あるいは卵黄リポ蛋白に構造変化が起こりそれぞれの機能特性が発現する。
これらの機能特性は鶏卵の水を保持する特性、空気を保持する特性、および油を保持する特性として現される。現在、食品分野においては、卵白の加熱ゲル化性が主にかまぼこ、ハム・ソーセージ、麺に、卵白の起泡性がケーキやメレンゲに、卵黄の乳化性はマヨネーズやドレッシングに利用されている。
本稿では、まず、食品分野における鶏卵の機能性について塩類やpHや保存の影響などの実際的な応用研究を紹介する。次いで、鶏卵の構成蛋白質と機能特性に関する最近の基礎的研究を紹介する。
食品業界にとって、おいしさの追求は重要な課題である。原材料の吟味からはじまり、処方、加工工程や保存方法の検討まで、時代に応じて様々な形での努力がされてきた。食品の配合という面では、物性を改良するために増粘剤、ゲル化剤、乳化剤などの食品添加物や、でん粉、たん白、油脂、糖類などの素材が利用されている。 食品の品質向上を目指した取り組みの結果、小麦由来のたん白を増粘多糖類で改質処理することにより新しい性質が付与されることを見出した。この効果を利用した新規たん白素材の「プロフェクトP」を紹介し、その特性や各種食品へ応用した際の品質改良効果について述べる。
現在、食に係わる様々な問題が発生し、食の安全に対する消費者の関心が高まると共に食品業界では、「安全、安心」の確保を第一に挙げている。
こうした背景の中、食品添加物についても科学的根拠がないにもかかわらず、安全性に不安があるというイメージだけで極力使用しないという方向に動き出している。特に保存料に関しては、すでに不使用というメーカーが増えている。
しかし、保存料の代替が必要であり、ここでは、保存料でない抗菌性成分を中心にした食品の保存性向上技術について述べる。
食品衛生法上認可されている主な物質及び微生物由来の抗菌性成分の特徴、抗菌機構、抗菌性などについて示し、より安定な保存性を確保するため諸条件との組み合わせが行われるが、その際、重要となる各種微生物の生育条件(湿度、pH、水分活性、酸化還元電位、食品成分など)についても示す。
これら抗菌成分は、法律的なこともあり、増える要素は少ないが、今後の方向性としては、風味や物性への影響が大きく食品への使用が難しい物質の改善、抗菌性を持つ食品素材(発酵物を含む)の開発などが考えられる。
食の本質から食品の安全・安心について、考えを述べた。食品は、人の健康を維持増進させる成分を含み、調理や加工によって安全な食物となるものと定義することができる。人が食する目的は、健康に生活し、生物としての機能を果たすことにある。しかし、食品が最初から安全な訳ではない。食品の原料になる植物や動物も、人と同じように生き、生物としての機能を果たしている。生物として生きるために、様々な工夫をしている。その一つに天然毒物がある。各種の天然毒物を作り出すことによって、外敵から身を守っている。食が、このような生物の特性の上に成り立っていることを理解する必要がある。食の安全・安心は、栄養と毒性のリスクバランスで、栄養も摂り過ぎれば生活習慣病を引き起こす。人類は長い歴史の中で、食料の量的および安全性の向上にあらゆる知恵を巡らしてきた。
いま日本食が、再評価されている。われわれの祖先は、多様な食材を組合せ栄養と毒性のバランスの取れた食を作り出した。まさに温故知新、昔の人達の知恵に脱帽するのみである。
食の安全・安心について、多くの人に食の本質から眺めることを期待したい。
現在、世界中で好まれ、食されているさまざまな麺。日本においても麺の人気は非常に高く、より美味しい麺を求め、製法、形状、喫食方法等の工夫が日々なされている。中国が発祥で1000~2000年前の古くから主にアジアの食品であった麺類が、今や世界中に広まり、国際食として定着しつつある背景には、1958年に即席油揚げ麺「チキンラーメン」が開発され、その後、非油揚げ麺、生タイプ即席麺と技術開発競争があったからだと言える。
本稿では、麺の古今東西として①製麺方法から見た麺の種類、 ②日本の麺の種類、③現代の麺、さらに現代の麺として主流となっている即席麺の中で、④ロングライフ麺(LL麺)の課題と改善、以上4項目について述べる。
Norovirus(NV)はヒトの腸管上皮で増殖するウイルスであり、近年糞口感染が問題となっている。しかし、二枚貝、特にカキがウイルスを濃縮し食中毒を引き起こすことから、水産分野でもその対策が急がれている。カキのNV浄化法の確立を目的として、培養できないNVの代替に、同じ科に属するfeline calicivirus(FCV)を用い、環境水中およびカキ消化管中での生存性、紫外線、電解処理および高静圧処理による不活化効果について検討した。FCVの感染価は保持温度が高いほど速やかに減少したが、10℃以下では検出限界以下となるのに2~3週間を要した。さらにカキ消化管中でも感染価は速やかに減少し、抗FCV活性を有する細菌も分離され、消化管内細菌の影響が示唆された。しかし、FCVを99.9%以上不活化するには2.5×104μW・sec/cm2の紫外線照射を要した。電解処理では、3%NaCl溶液および海水でそれぞれ有効塩素濃度0.23および0.41mg/L・1分間の処理により感染価が99%以上減少し、ほぼ検出限界以下となった。高静圧処理では、カキの殻を外す条件である80MPa・40℃・5分間の処理で、FCVの感染価が1~2桁減少した。以上の結果から、カキのNV浄化には電解海水を用い、水温を20℃程度とし、高静水圧処理を組み合わせることが効果的であると考えられる。ただし、代替ウイルスによる試験であることから、今後はNVの感染性評価系の確立が急務と考える。
試験菌株の増殖曲線より、DDACは溶菌を起こし、比増殖速度と誘導期の両方を阻害する混合型でありことが分かった。そのときの阻害率は、薬剤濃度の2乗に比例し、LC50が0.7mg/Lと長鎖アルキル基が1つのものに比べて殺菌効果が優れていることが分かった。また、50mg/Lの薬剤による30分間の処理では、電子顕微鏡による観察においてブレブの形成は認められなかったが、20mg/Lの薬剤で1晩処理するとブレブの形成が、明瞭に見られた。以上より、まず殺菌が起こり、結果としてブレブの形成が起こると考えられた。
カステラは、ご存じのように16世紀頃、西と東の文化の出会いによってもたらされたものの一つです。弊社福砂屋のカステラづくり380有余年は、このカステラの発展の歴史にまさに重なっているわけです。そこで、これまで長年、調査、研究してきました内外の文献なども踏まえ、味わいの変遷といったところを主題に、カステラの今日までの歩みのおおよそをご紹介いたすべく、この寄稿を機会にまとめた次第であります。
果実フラボノイドの抗微生物作用の機能性食品への応用を目的として、中国黒龍江省原産の野生種ユキノシタ科黒房スグリ(Ribes nigrum L.、登録商標名:黒加倫)の果実粗抽出液(以下で黒加倫抽出液と略す)、およびその抽出液から分画精製したアントシアニン類について、抗インフルエンザウイルス活性並びにその活性発現機序を検討した。
1. 黒加倫抽出液の抗インフルエンザウイルス活性:
黒加倫抽出液は、3.2μg/ml(乾燥重量/ml)の濃度で、A型インフルエンザウイルス(IVA)およびB型インフルエンザウイルス(IVB)のプラーク形成を50%抑制した。また、この抽出液10~100μg/ml(pH2.8)でIVAおよびIVBの感染価を99.9%以上不活化し、pH7.2においても95~99%の不活化を認めた。一方、IVAおよびIVBの感染細胞内における増殖に及ぼす抽出液の影響を検討した結果、100μg/mlの濃度で、ウイルスの細胞内増殖は完全に抑えられた。また、同じ濃度の抽出液は、細胞内で増殖したウイルスの細胞外への放出を顕著に抑制した。以上の結果から、黒加倫抽出液の抗ウイルス活性は、ウイルスの直接不活化、並びに感染細胞に作用して起こる細胞内でのウイルス増殖抑制と細胞からの放出抑制に起因するものであることが明らかとなった。
2. 黒加倫抽出液の画分とその抗ウイルス活性:
黒加倫抽出液から、カラムクロマトグラフィーおよび薄層クロマトグラフィーで組成分を分画精製し、高性能液体クロマトグラフィー及び質量分析で同定した。得られた画分は、アントシアニン類の3-O-α-L-rhamunopyranosyl-β-D-glucopyranosyl-delphinidinおよび3-O-β-D-glucopyranosyl-delphinidinを主体とする画分(画分F')と、3-O-α-L-rhamunopyranosyl-β-D-glucopyranosyl-cyanidinおよび3-O-β-D-glucopyranosyl-cyanidinが主体をなす画分(画分E')であった。
得られた画分E'と画分F'の抗インフルエンザウイルス活性を検討した結果、抗ウイルス活性(IC50)は500μg/ml前後の高い価を示した。この抗ウイルス活性は、ウイルス感染性の直接不活化によるものではなく、ウイルスの細胞内における増殖のステップ、とくに、細胞表層のインフルエンザウイルス・レセプターのブロックによる、ウイルスの細胞への吸着阻害と、感染細胞からのウイルスの放出の段階を抑制するものであることが示唆された。また、画分E'とF'とは相加作用を示し、少なくともデルフィニジン配糖体とシアニヂン配糖体とは、同一の抗ウイルス活性機序を有すると考えられる。
カット野菜は調理の手間が省け、廃棄のロスもなく、非常に便利である。しかし、カットしていない野菜に比べて傷みやすく、さらに消費されるまでに、流通などで時間がかかることから、微生物の増殖の問題がある。微生物の増殖を抑制するためにカット野菜の製造現場では、製造機械、器具類へのアルコール噴霧などの工程殺菌、次亜塩素ナトリウム等の塩素系殺菌剤による生野菜の除菌処理、醸造酢や食品添加物での日持ち向上処理が行われている。
本稿では、最新のカット野菜工場の衛生管理と日持ち向上について以下の5項目で解説する。
①カット野菜工場の衛生面の問題点 ②カット野菜の原料野菜由来の微生物 ③器具、機械の汚染 ④カット野菜の洗浄と殺菌 ⑤カット野菜の日持ち向上剤の利用
トップPT
トップサラダビタミンシリーズ
本研究では、消臭効果が知られている大豆焙煎物溶液または米糠焙煎物溶液を使用した。そして、大豆焙煎物溶液または米糠焙煎物溶液の水に懸濁した脂質に対する酸化防止効果を測定した。これらの焙煎物抽出溶液の酸化防止効果は、水中に懸濁させた脂質に対してトコフェロールと同じまたはそれ以上であった。その酸化防止効果は、脂質を界面活性剤で懸濁させた系よりもエタノールで懸濁させた系において優れた傾向を示した。大豆焙煎物溶液または米糠焙煎物溶液中のポリフェノール量はそれぞれ43.7mg/mLと63.0mg/mLであったが、DPPHに対するラジカル消去機能は低い値を示した。いずれの焙煎抽出物中のポリフェノールのうち、DPPHラジカル消去能を示す物質は、約2.0μgであった。これらの結果から、デスミーは、ラジカル消去能とは異なる作用機序で脂質の酸化を抑制していることが推定された。
近年、加工食品の比率が増加傾向にあり、これまでの家庭食より外食やコンビニエンス惣菜、中食等の需要度が高くなっている。また食品に関わる事件や事故が相次いで発生し、食品の安全性に対する消費者の関心も高まっている現状の中、食品業界全体においても、安全な食品を提供することが重要な課題となっている。食品工場における安全性の確保において、微生物を抑制する衛生管理や品質管理は重要な課題であり、食中毒菌をはじめとした病原菌等による二次汚染や品質低下の防止において洗浄・除菌による食品の衛生管理(サニテーション)は重要な役割を持っている。本稿では微生物制御における洗浄・除菌による食品の衛生管理について、①汚れや微生物に応じた洗浄剤、除菌剤の特性・分類・選定について、②除菌剤『ジデシルジメチルアンモニウムクロライド』の特性や除菌作用、その特性を利用した除菌洗浄剤『せいけつ君』について、③食品工場における問題となりやすい器具・機械類および『せいけつ君』を利用したサニテーションの実施例について解説する。
日本古来の伝統文化は食文化を通して受け継がれて来たが、近年の食生活を考えると、様々な問題が提起されている。先進諸国の中でも自給率が低下している日本の食料事情を考えてみた。近年の食品の歴史の移り変わりは予想しない方向にあり、食料輸入額と内容を見ていくと、輸入による農畜産業界の弱体化等は、自国での自給率の低下を招き、今後の食料確保が懸念される。
わが国における食品添加物の安全性を確保する基本となる行政的な仕組み並びに、これを補完する食品添加物業界とその団体としての日本食品添加物協会の取組みを概観した。そして最近の添加物をめぐる話題を取り上げ、添加物事業者と加工食品事業者、さらには消費者など添加物に関わる関係者が添加物について正面から向かい合い、安全確保の実態、使用の実態を相互に理解して不安に対処することを提案した。
ベーキングパウダー(合成膨脹剤)は水と共に加熱すると、化学反応によりガスを発生する食品添加物で、製菓、製パン業界を始め、食品を膨張させる、あるいは食感を改良する目的で幅広く利用されている。本稿では、ベーキングパウダーのガス発生原理と分類、使用原料、酸性剤の役目を説明し、実際の使用にあたって、目的とする各種製菓・製パン製品に対して選択すべき、最適なベーキングパウダーを紹介する。
一説によると、奈良朝、欽明(きんめい)天皇の時代(約1500年前)中国は呉の国の高僧が、現在の大阪此花区伝法町に上陸した時、奈良の都への献上品(土産)としての梅の木を持参したと伝えられています。その時代は実よりも花の方が愛されていたようで、梅干しが登場するのはまだまだ後の時代となるわけですが、当時はカキ、モモ、ビワ、アンズなどとともに梅も生菓子として食べていたと言われ、それが時代とともに梅を塩漬けという保存食に加工することを考え出したのではないかと思われます。平安中期(984年)丹波康頼(やすより)が著した日本最古の医学書「医心方(いしんほう)」に梅干しの記述とその効用がとりあげられているように、これといった薬品のなかった時代において梅は優れた薬効を発揮していたのではないでしょうか。
現在、日本一の梅の産地である、紀州和歌山県「みなべ町」において「産」「学」「官」の力を集結し、言い伝えの多い梅の効用を科学的に解明しようとプロジェクトをたちあげ研究が進んでおり、その結果、医療面においての、梅の未知なる力が徐々に実証され始めています。
先駆者より受け継がれ、守り続けてきた「梅」。
古来よりの魔法の食品であり、現在における健康食品の王様「梅」、粗食の元祖ともいえる梅に、さらなる光が当たることを願いたい。
我々日本人は古来より米を主食とする食文化圏に属していたわけであるが、生活様式の 欧風化とともに米の消費量は減少し、それに伴いパン、肉類、油脂の消費量が増加してきた。更に、米の精白技術の発展に伴い、米糠中に含まれる栄養成分を除去してきたことにより栄養素の摂取にアンバランスが生じてきた。これらのこと等が原因で生活習慣病、アレルギー等の発生が増加してきた。
玄米は栄養成分的には優れているものの、消化吸収が悪いとされ一般庶民にまで食されることは無かった。近年に至り玄米を僅かに発芽(0.5mm~1mm)させると種々の酵素作用が増加することが明らかにされ、栄養成分、機能性物質の増加と共に食べやすくなることがわかり加熱殺菌処理後、パック詰をされて市販されるようになってきた。この発芽玄米の開発に端を発し種々の穀類にも応用されてきた。このような外皮成分を含んだ食品素材に抵抗性を無くすことが、我々の健康志向のみならず、将来の食糧危機に向けての食品素材の有効利用にも結びつくことであろう。
小麦は原産地のメソポタミヤからシルクロードを通って中国に伝来したと思われる。この小麦を加工した中国の麺の歴史、その麺が中国から日本に渡来し、索餅(さくへい)が素麺やうどんに変化していった過程や、中国から食品加工技術をもちかえった僧侶についてふれ、そば切り、パスタ、中華めん、即席めん等の麺類のわが国でに歴史や、それらのめん類に関する食文化について述べる。
麺は発展の過程でいろいろな変化をとげ、料理法や食べ方もバラエティに富んでおり、かつ地域によっても料理の変化は異なっていて、食文化が多彩に広がっていった。、また、だしや具材も多種多彩になり、東京と大阪にもだしの味や色の違いがあるように、各地で独特の食文化がうまれた。最近産業博物館として、[揖保乃糸そうめんの里資料館]や[インスタントラーメン発明記念館]などが開設され、麺の食文化の情報発信基地が日本全国に増えつつある。
小麦や蕎麦を扱う者として、わが国の多くの人々に愛されている麺類が、単にカロリー源としてではなく、健康で長寿の為の機能性食品としたいものである。
加工品においては保存期間中の退色と焼成後の食感のパサつきといった品質低下が考えられる。これら品質低下を抑制するための、酸化防止製剤の開発の取り組みと、調味料成分等が鮭肉組織に浸透し肉質を改良することによるパサつき感抑制についての報告。
京都には明治以前の古くに京の都に伝わり、その種苗の栽培方法が保存されて現在に残されている伝統野菜が多数あります。その中から現代の食事や料理に適した野菜を17品目選定し、京のブランド産品として認証し全国に向けて出荷しています。これらは育種という過程をほとんど経ずに昔の姿のままで残されているので、現代の市場流通に適している野菜にはない未知の物質が含まれていることがあります。みず菜や聖護院だいこん、伏見とうがらしや万願寺とうがらしには発ガンを抑制する抗変異原性を持つ物質があることがわかってきました。
近年、生活洋式の欧風化に伴い、我々の食生活は従来の米飯一辺倒から小麦粉を中心とした加工食品であるパン、うどん、パスタ、クッキー、ケーキなどの消費が伸びてきている。現在我々が口にする加工食品には小麦粉が何らかの形で関与しており、日常の食生活の中でパン、うどん、パスタなど小麦粉無しの食生活をする事などは考えられなくなって来た。特にパンについては我々日本人はいつ頃から本格的に食べるようになったのか、その歴史を明らかにするとともに、小麦粉の持つ特性、およびパンの持つ特性をよく理解しておくことも、末長く健康な食生活を送る上でも重要な問題のひとつに考えられる。そこで本稿ではパンの歴史をひもとくと共に、米食の食文化との違いについても考えてみたい。
本稿では、水の凍結による圧力発生を利用して、各種微生物懸濁液、にごり酒、地ビール中の酵母、ヨーグルト中の乳酸菌、牛乳中の混入菌などへの凍結昇圧処理の菌、酵母への影響を観察した。今後、密封冷却に耐える大型容器を開発すれば、この方法は食品や生理活性物質の製品の殺菌、細胞成分の抽出や食品への調味液の浸透などについても利用できる可能性がある。
植物繊維質の焙煎生成物が畜肉や魚肉の嫌味臭を緩和または抑制することが、以前より知られている。また、この焙煎繊維質から抽出される主な有効性分がマルトール誘導体である。しかし、マルトール単体は、かなり強い芳香を有するため、特定の食品にしか使用できない。また、マルトールは着香の目的にしか使用できない。植物繊維質(米糠、大豆)を焙煎、抽出したエキスの臭気抑制効果について紹介する。
“越前うに”は古来より「からすみ」や「このわた」と並び日本三大珍味のひとつにあげられています。本稿では、絶品の味わいの“越前うに”の古来からの塩蔵法による製法、効用、取れ高や食べ方などについて紹介しています。
生物は自己を外敵から防御する機能を備えており、それらを武器にして生態系を形成している。こうした機能を支配する物質として植物由来の成分が多く知られており、広く人類に利用されている。香辛料(ハーブ、スパイス)や精油成分は代表的な機能物質で、人類に古くから利用されている。20世紀になって、科学薬剤が安価に製造されるようになり、こうした天然の機能物質の利用が古典的な思考が基本にあるとの考えもあって、ともすれば軽視されるようになってきた。しかし、科学薬剤の使用に不安が広がる昨今では、天然の機能物質の利用が強く望まれている。
消費者が食品を購入するにあたり、選択する為のより詳細で正確な情報が求められている。食品の安全性に関する要求の高まりに加え、食品貿易を円滑に推進する為の規格基準共通化の流れにより、食品表示に関わる改正法が次々行われています。食品添加物も、製剤の内容は勿論、その由来原料、製造方法、生産国などの情報を求められるようになってきた。これまでの食品添加物を中心とした、加工食品の表示方法に関わる変遷をまとめた。
本格焼酎は、昭和50年代後半に爆発的なブームが起き、南九州の地酒から一気に全国で認知されるアルコール飲料になった。そして、ここ数年は本格焼酎、特にいも焼酎と黒糖焼酎が脚光を浴びるようになっている。その要因として、これまでに味わったことのない独特な風味に引きつけられているといわれている。また二日酔いしにくいことや“本格焼酎を飲むと血栓を溶かす酵素が活性化する”ということが明らかになり、健康面での優位性も証明されたためと考えられる。今回は本格焼酎、特にいも焼酎の風味について紹介する。
多くの小児にアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の原因物質として日常摂取する食品の成分としてのタンパク質が関与している。また成人では、食物アレルギー以外に口腔アレルギー症候群(OAS)やラテックス-果物症候群と呼ばれる新しいタイプのアレルギー疾患と診断される患者の増加も注目されている。タンパク質が人の免疫系を刺激してIgE抗体の産出を誘導して、Ⅰ型(即時性)アレルギーを惹起する事が明らかにされてきた。食物アレルギーの現状と表示義務の背景、我が国における食物アレルギーの実態、植物性食品素材由来のアレルゲンと問題点、大豆を例としたアレルゲンデーターベース化と低アレルゲン、タンパク質の網羅的解析とアレルゲンの特定・帰属、アレルゲン欠失大豆などについて述べる。
国内食品の需給率バランスが取れていない日本においては加工食品の占める割合は今後増加傾向になる上、ライフスタイルも変化する中で、安全な食品という情報提供が消費者に十分される必要性がある。安全な食糧を供給し続ける上での食品表示は、消費者の正しい食品添加物への理解と製造業者の正しい用法そして、行政の食に対する取り組み姿勢管理が今後重要な課題となる。
食品環境を取り巻く変化を、戦後55年の食品加工業の流れと食に対する満足器官、日本人の長寿命化、少子高齢化の問題、高齢化社会へのものづくりを考えると、年代別食品の開発の必要性、食事の改善による健康問題など踏まえた商品作りが必要な課題である。
ライフスタイルの変化に伴う食事の形態の変化から、冷凍食品を含めた加工食品の需要が高まってきている。安全と併せて味覚、風味、食感といったおいしさも重視されている。食肉惣菜において、おいしく感じる食感を得るには、食肉を構成しているタンパク質の特性を理解する事が重要であり、加工食品の製造において軟らかな食感を引き出す工夫が行われている。本稿では食肉惣菜品の食感を向上させる加工方法を中心に述べる。
中国の食品添加物工業は非常に新しい産業であり、成長産業といわれる食品工業の発展と共に大きくなっている。1996年から食品工業は中国国民経済の中で著しく成長の期待される産業となっている。現在中国の食品工業の総生産額は8千億元に達している。食品添加物工業の総生産額は食品工業の中で約3%となっており、年間の成長率は12~14%となっている。
食材や調味食品の保存・品質保持のために保存料(抗菌剤)が不可欠であるが、食品は安全性において最新の注意医が必要である。そのため、現在我国では食品添加物の保存料としては、わずかな合成保存料とアルコールや有機酸しか認められていない。しかしながら、長い人類の歴史の中で安全性が確認されてきた食品や香辛料、香料などの中には抗菌作用を持つ物質が存在することが明らかになってきた。これらの場合は、食品そのものあるいは食品素材であることから、食品添加物としての厳しい制約を受けることなく抗菌効果を適用することができる。そこでこのような天然の抗菌物質について展望してみたい。
当社の取り組む技術の先進技術や方向性などを、食品業界の動向を踏まえその姿をたどってみる。戦後の経済復興期から、その後の経済成長期、女性の社会進出、単身赴任者の増加など、社会の現象によりスーパーマーケットの隆盛や、コンビニエンスストアーの登場で物流面での変革を生み出してきた。これらは食品にも大きく影響し、微生物の増殖の抑制や老化防止、水分保持など食品にまつわる物性の向上技術への重要性を増してきた。
生活の多様化に伴う食品には、おいしさはもとより安全であることが求められている。健康指向による薄味に低塩化がすすみ保存性をより不安定なものにしている。保存剤や日持向上剤といわれる食品添加物を有効利用した工場調理における食品の保存技術を保存剤、日持向上剤、衛生管理との関連について説明する。